(28)東口・徒歩8分
「遅いよ、ゆー」
春テスが近いというのに
僕は呼び出された。
やっとというべきか
流れの中で小雨さんと椎葉さんと
連絡先を交換したのだ。
今は後悔している。
椎葉さんは暇さえあれば
僕に呟きのようなメッセージを
毎日送ってくるからだ。
お腹すいたとか、虫がいたとか
あの雲が餃子の形をしてるとか
心底どうでもいい報告ばかり。
そして、この20時を越えた時間に
駅の東口に呼び出された。
夜にこの子と会うのは
正直ドキドキする。
素面を装ってきた僕だけど
僕はコイツとキスをしたのだから。
「要件も言わずに呼び出すってなんだよ」
僕はまぁまぁな値段の服に着替えていた。
きっと周りから見れば生意気な中学生だとか
そんな事を思われているのかもしれない。
「要件言ったら、多分来ないだろうから」
「え?なにそれ」
僕は身構える。
デートとか?
椎葉さんは黒のパーカーに
ボタニカル柄のスカートの姿。
そんな可愛らしい姿とは裏腹に
少し予想していた言葉が飛ぶ。
「宇宙人を見つけたから、破壊しにいく。手伝って」
やっぱりそれか。
僕は顔が険しくなる。
「待てよ」
「待たないのさ」
「僕は破壊なんてしたくない」
「何言ってるの、ゆー。手を組んだんだよね?」
キスの後
あんなに塩らしい顔をしていた癖に
今はまたあの日みたいな
冷徹な顔をしている。
「手は組んだよ・・・でもさ」
「宇宙人に乗っ取られるよ?」
「よく分かんないよ。乗っ取りって・・・」
「一応さ、私だって、人間の心を持ち合わせてるのさ」
「は?何言ってんだよ」
「だからね、言ってなかったこともある」
「なんだよ」
「行けば分かる。宇宙人のいるところに」
「ここで言えよ」
「来れば察しがつくのさ」
「なんなんだよ!」
僕は少し苛立つ。
話の中身がまるで見えてこない。
「じゃあ、破壊しなくてもいい。でも、宇宙人を放置したらヤバいって事、教えてあげる」
「どういう事だよ・・・」
「行く?行かない?」
「そこまで言われたら、行くしかないだろ」
「行くわよ」
また西口へ向かうかと思いきや
椎葉さんはそのまま東口から広がる
商業ビルとマンションが建ち並ぶ場所に
歩みを進めた。
僕だって馬鹿じゃない。
その方向に歩みを進めれば
何となく察しはついていた。
「調査報告によれば、この施設にいる」
異様な建物。
宗教法人・透明教。
父さんと母さんが信じていた
その神様を信じる人が
たくさんいる施設。




