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(16)僕と創造神



指で銃を作る。

人差し指が銃口だ。

子どもがそうやって遊ぶように

銃を撃つ。



銃口からは見えない銃弾が飛ぶ。

その銃弾に触れた物質は

均等に細断され、崩壊する。



あの日寿司屋で椎葉さんが

パパ活宇宙人を破壊する為に使った技。


技は他にもある。


壊したい対象を意識するらしい。

意識して、壊したいという気持ちを持つ。


じゃんけんのグーから、パーにする。

右手でも左手でも構わない。


そうすると、対象は爆散する。


逆にパーからグーにすると

くしゃくしゃに潰れていく。



僕は椎葉さんに教えてもらった力の事を思い出す。

それを家にあるゴミで試していた。



力加減が難しい。


僕は少年漫画の修行のように、その力を練習する。

輪ゴムの指鉄砲で練習したり

握力を鍛える為にゴムボールを握った。



練習して、試しているうちに

僕の中に願望が芽生える。




この力を、使ってみたい。

お試しでゴミを破壊するのではなく。

誰かのために、もしくは・・・

自分の暇つぶしのために、この力を使いたい。




とはいえ僕は、倫理観はある方だ。

例えばこの力を使って

学校の教室の窓ガラスを割ることさえ

きっと躊躇うだろう。



力を授かった日の翌日。

いつも通り登校する。



校門を抜けて、校舎が見える。

窓ガラスに反射する朝の空を見ながら

僕は力を試したくなっていた。

でも窓ガラスを割ったら皆困る。

やめておこう。


校庭を見渡す。


申し訳程度に配置された鉄棒がある。

あれを誰かが使ってるところを

僕は見た事がない。


あれぐらいなら、ちょっとだけ・・・

力を加減して、曲げてみたい。



僕は手を広げる。

鉄棒を見ながら、

それを意識する・・・



〝破壊したい〟



そういった気持ちが一番重要らしい。





「ダメだよ」





その声に気付き、我に帰る。

僕は聞こえた声の方を振り返る。

誰もいない。


いや・・・

遠くにその後ろ姿が見える。

身長が高いから、その人だとすぐわかる。


下部楽かぶら風馬ふうま

創造神。




神や宇宙人たちが

どうやって互いの事を認知しているのかは分からない。

ただ、今のは間違いない。

僕に向けた言葉のような気がした。

いや、気のせいかもしれないけれど。



僕が力を行使しようとしたことを

止める言葉のように思えた。



間違いなく、彼らは僕たちの事を知っている。

椎葉さんの事も・・・おそらく。

僕は何か悪いことをして

追い詰められているような気分になる。


心臓をちょっとだけ

ツンツンとされているような。


直接的ではないけれど、迫ってくるような感覚。

悪寒。

そんなものを感じながら僕は上履きに履き替える。

クラスへ向かおうとした時だった。



下駄箱に背もたれていた男がいる。

今度は間違いなく、その男の発言である事が分かる。

僕の目を見て、訴えかけている。



「いいか。一度壊したものは、戻せない。当たり前の事だけど、戻せないんだよ」




下部楽風馬が直接僕に語りかけてくる。

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