(15)一億円の百分の一
その映像は僕の脳内で何度も再生される。
サッカーのビデオ判定のように
スローモーションで
何度も映像が進んだり戻ったりした。
破壊神の椎葉さんが電柱の根元を破壊する。
当然、電柱は倒れる。
それが倒れる先に
気付かず歩いたままの三依小雨さん。
彼女の後方から、電信柱が倒れかかっている!
僕は今やっと公園を出たという位置にいる。
救えない!
当初のプランは、僕が小雨さんを助けるという事。
しかし。
僕の足の早さでは、全く間に合わない!
僕は直ぐに諦めてしまった。
というか、電信柱が倒れるという
あり得ない現象に足が止まってしまった。
倒れた電柱は
小雨さんの目前で倒れた。
ふぅ・・・助かった・・・
なんて思った矢先。
電柱に張り巡らされた電線がムチのように
時間差で小雨さんを襲う。
それは、ありえないスピードで
彼女の頭上から足元にムチの様に
襲いかかった。
しかし。
電線は彼女の身体をすり抜けた。
僕には彼女の後ろ姿しか見えなかった。
そして小雨さんは何か動じる事もなく
そのまま歩いて行った。
あんなに大きな音が出ているのに
何もなかったかのように歩く小雨さんも
変だ。
「ほら、宇宙人でしょ?」
気が付けば隣に椎葉さんがいる。
「いや・・・ついていけない」
「あの子に電線が当たった瞬間、彼女の身体は引き裂かれたの」
「ひ、引き裂かれた!」
急にグロい!
「でも、その瞬間に再生・・・創造してるのよ。あの子の新しい遺伝子が。創造神の手によって」
「なるほど・・・あの時の花みたいな感じか」
僕は下部楽風馬が折れた花を再生させていた事を
思い出した。
「電線がすり抜けて見えたのは、回復のスピードが早過ぎるからね」
「つまり・・・本来ならあのまま真っ二つになってたって事?」
「そういう事なのさ」
「ところで、ゆー、遅い」
「いや、椎葉さんのタイミングが早過ぎる!合わせられないって!」
「なら、私の力、少し分けてあげるよ。次は自分でやってみな?」
はい、小指出して。
なんて言われて
僕はそのままそれに従う。
・・・いや、従ってしまった。
僕は椎葉さんと指切りげんまんをする。
小指と小指が絡まる。
その時、僕を言葉にできない感覚が襲った。
「みーのパワーの100分の1だけ、分けたよ」
「100分の1かぁ・・・」
「何?不満?」
「だって、100円だったら1円だぞ」
「1億だったら100万だよ」
「そんなにパワーあるわけ?」
「使ってみなよ。教えてあげるから」
僕に分け与えられた力は
車を潰せるし
人を殺すには十分なものだった。
そんな力を僕は手に入れた。
いや、手に入れてしまった。