(13)退屈な日常会話
僕は結構ませてる方だと思う。
中学二年生にして
大半の人が経験したことのないことを経験してきた。
お金は沢山ある。
欲しいものは買ってしまった。
欲しいものは簡単に買えるって分かると
不思議と欲しいものはなくなる。
だから、僕はなんとなく
同い年のクラスメートよりは
精神年齢が上なんだと思っていた。
全てが呆気なく、面白いとは思えない。
それが僕の毎日だった。
そういえばこんな事を言われた事がある。
由依と初めて喋ったのは
その話だったような気がする。
「あのさー、なんか達観してない?」
下部楽由依。
彼女は中学1年生の頃からクラスが一緒だ。
「達観?」
「なーんか、上から目線ってやつ?」
「そんなつもりはないけどなぁ」
「ま、仲良くやろ?」
そんな会話をしてから
僕は由依と喋るようになった。
後に分かる事だけど
クラス1軍の彼女からすれば
僕は下々のモブキャラってところだ。
彼女からすれば、皆等しく愛想を振りまいてるのだろう。
彼女は他の誰よりも近い距離で僕に接してくれる。
そんな事を思い出しながら
歴史の授業は終わる。
「うぃ~ッす!じゃ、今日の授業はここまで〜!」
人気者の社会の教師ニキータの授業が終わる。
それと同時にチャイムが鳴った。
僕は今、楽しい。
授業が終わって、クラスメート達が騒ぎ出す。
僕はただ、傍観している。
その組み合わせを、面白いと思っている。
下部楽由依の兄貴は創造の神らしい。
そんな彼女は今、転校してきた破壊の神と会話をしている。
破壊神と創造神の妹。
それが同じクラスにいる。
それを知ってるのはたぶん僕だけだ。
椎葉しいと下部楽由依の会話を
盗み聞きする僕。
「なぁ、シーって部活とかどうするの?」
「部活?」
「前の学校で何やってたの?」
「みーはなんもやってなかったよ。ゆーいは?」
「え?私はバスケだよ」
下部楽由依は椎葉しいの事を〝シー〟と呼び
椎葉しいは下部楽由依の事を〝ゆーい〟と呼んだ。
「じゃあバスケ部にする」
「はっ?マジ?」
「ダメ?」
「いや、全然嬉しい」
「よろしくなのさ」
破壊神・椎葉しい。
彼女は僕と手を組んでいる。
それなのに、彼女は僕への説明もなく転校してきた。
このクラスには宇宙人の三依小雨さんがいる。
このふたりの関係性がよく分からない。
同じクラスにいて大丈夫なのだろうか?
大丈夫も何も、もう同じクラスにいるんだけども。
「なぁー、お前はどっち派?いや、誰派?」
視界を遮る様に現れたアホ面。
僕との距離がバグっている男。
アホの小宮。
「誰って・・・」
「俺たちの絶対的エース三依小雨だろ?」
「クラスのヒエラルキートップの下部楽由依だろ?」
「そして、ダークホースの転校生椎葉しい。さぁ、誰派なんだよお前は?」
「矢継ぎ早に・・・」
「あの3人なら誰と付き合いてーんだよって話さ!」
アホ面を晒して、アホな質問をしてくる。
誰が良いかだって?
うーん。
んな事、知るか!