(119)花と猫
「行ってきまーす!」
誰もいない部屋に挨拶をし
自分の家を出る。
鍵を閉めて
少し遠くのコンビニへ行く。
そして、静かに自分の部屋に入る。
俺は今日、わざわざ休みを取り
プランターに糞を置いて逃げる
迷惑な猫の捕獲作戦を試みた。
玄関で息を潜める。
1時間経った頃、物音がする。
恐る恐る、リビングにゆっくりと入る。
猫の後ろ姿!
猫はうーうー、とプランターの
咲きそうなコスモスを威嚇している。
どういう状況?これ?
「見つけたぞ!猫!どこから入ってきたんだ!お前!」
そう言うと、猫は振り向いた。
振り向いた猫に
見覚えがある。
猫に見覚えがある訳じゃない。
猫のその雰囲気に、見覚えがあった。
「椎葉さん・・・?」
じゃあ、睨みつけている
その花は・・・
もしかして敵なのか?
「ただいまー」
由依が馴れ馴れしく
俺の部屋に入ってくる。
「きゃあっ!猫!」
可愛い猫のお出ましに由依が喜ぶのも
束の間、猫は彼女の顔を引っ掻いた。
その後、俺は猫を飼うことにした。
俺は猫のことを〝シヴァ〟と呼び
花のことを〝ブラフマー〟と呼ぶことにした。
「変な名前」
由依はそう言って、微笑んでいた。
これからの生活は
きっと楽しくなるだろう。
【ディストラクション・インベーダー・ラヴコメディ おわり】