(118)エピローグ
「うわっ!」
まただ。このニオイ。
強烈なネコの排泄物の匂い。
俺のベランダが1階だからって
猫は俺の事を舐めすぎだ。
しかも決まって、花が咲きそうな
小宮の墓であるプランターに
それを平気で置いていく。
その姿を見かけた事はないが
最近の悩みの種だった。
「それなら、ホームセンター行けばあるよ。猫よけ」
由依がそう言うので
俺たちはまた、歩いてホームセンターへ向かう。
「猫よけって何?」
「トゲトゲした床みたいなやつ」
「は?そんなの酷くない?」
俺は驚いた。
実際の商品もそうだった。
トゲを敷くシートみたいなのを
ベランダの欄干に付ければ
確かに猫の侵入は防げそうだけど
「いやでもネコのうんこの方が臭くない?」
あっさりとウンコなどと言う由依。
コイツには気品さのかけらもない。
「でも。このトゲトゲを猫が踏んだら可哀想だよ」
「あのさぁ〜!猫はそこまでバカじゃないって。痛そうなら近寄らないよ。だから猫よけなんだって」
「うーん、まぁ、買ってみるか」
少し良心と財布が痛んだけれど
俺は猫よけのシートを買って
1階のベランダの欄干と
念の為、小宮の墓であるプランターの周りにも
それを配置しておいた。
3日後。
「うわっ!」
同じく、猫のフンが
小宮の墓の上に・・・
それに、もう直ぐ咲きそうな花を
汚すかのように土の上に
落ちていた。
「くそう・・・」
猫よけ、意味ねーじゃん!
痺れを切らした俺は、
フンだけ外にぶん投げて
小宮の墓を室内で育てる事にした。
少し陽当たりは悪いけど
俺は実は、これが咲くことを
楽しみにしているんだ。
後日。
家に帰った瞬間、その匂いが鼻につく。
プランターにわざわざ
小さなフンが落ちていた。
密室のはずなのに
猫はどこから来たんだ。
部屋中を探し、猫が入れそうな穴を探す。
流石に排水溝を通るなんて無理だ。
とっ捕まえてやる・・・
俺はそう思った。