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(114)調和




椎葉さんが姿を消してから

ちょっとだけ時が経つ。

俺がやり残した事は

あとみっつ。



両親に会う事。



由依に会う事。



小宮の墓を作ること。



あと、もうひとつあった気がしたけれど

忘れてしまった。



俺は小宮の墓を作った。

というか、彼の残骸は無いから

ただ小さなプランターに

卒業アルバムを写した雑な写真を

土の中に埋めただけだ。


そこに何かがあるわけじゃない。

俺はただ、それを埋めた。

プランターはボロアパートの小さなベランダに

置いた。

1階のベランダだから、微妙に陽の光は

当たったいないけれど

アホの小宮にはそれぐらいの

場所がいいかな、なんて思った。




「ねぇ、何育ててんの?」




そのベランダの欄干に手をかけて

俺に語りかける姿。



由依がいた。




「これは・・・別に何でもないかな」



「何それ。せっかくなら花でも育てたら?」



「面倒じゃん」



「面倒な事ほど、楽しいかもよ」



「えー」



「いいから。ホームセンターでもいこ」



確かに住所は教えてたけれど

由依から来るとは思わなかった。



俺と由依は歩きながら

ホームセンターを目指す。



「久しぶり」

「今かよ、その台詞」

「忘れてたから」

「最近、どうなの」

「〝誰かさん達〟のお陰で、大学入試が伸びて、大変だったんだよ」

「へぇ」

「へぇ〜、じゃないし」

「大学行くの?」

「短大だけどね」



そんな会話をしている

俺らは中学で出会って

もう20歳だ。



なかなかの距離を歩いて

ホームセンターにたどり着く。



「コスモスで良いんじゃない?」

タネの入った紙袋を、振り掛けをかけるように

さっさっ、っと振る由依。


「何でもいいかな」

「じゃあ、コスモスにしなよ」

「分かった」


タネを買って、俺たちはまた

来た道を通って、帰る。



「お邪魔しまーす」

平然と由依が部屋に入ってくる。



俺は正直、緊張していた。



それでも平然を装い

小宮の写真が入ったプランターに

店を植えた。



「咲くといいね」

「毎日の水やりが面倒だな」


「たまに、来てあげてもいいよ。水やりに」


「うーん。頼もうかな」




「ねぇ、あのさ、地球が続いたらって約束、覚えてる?」




俺はそれがずっと頭の中にあった。



でも、その前に解決しなくてはならないことが

あった。



「由依。その話の前に、話さなきゃならない事があるんだ」



俺の罪を。



話さなければならない。

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