表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/119

(110)ばあちゃん


ばあちゃん家は

国道を走っていれば

簡単に見つけることが出来た。



「ありゃあ〜」とばあちゃん。

「ばあちゃん!?覚えてる?」

「誰だっけ?」



そんな事を言いながら

ばあちゃんは俺を家に招いた。



「ばあちゃん。あの日、ばあちゃんが休ませてくれたお陰で、俺は・・・」

「友達が見つかって良かったじゃないの」

「うん」


「友達とはどうなったの?」


ばあちゃんは、何の気なしに

話しかけてくる。

ばあちゃんはテレビの中継を

観ていたのだろうか?

何も知らないような口ぶりだ。



「友達には、会えたよ」

「あら、良かったね」

「うん」

「何だか元気ないんじゃないの」


「うん、いや・・・」


俺は、ばあちゃんが理解できない事

分かっていながら

想いを打ち明けた。




「ばあちゃん。友達はさ、死んでるんだ。死んでるんだけど、生きてるんだ。俺には恩師がいて、その人はその友人を探しているんだよ。恩師には、友達が死んでるなんて言えないし・・・今だに色々分からないし」



自分でも、何を言ってるか分からない。



俺を東京で助けてくれた

清水さんの妹。

彼女は死んでいた。

その瞬間に、椎葉さんが憑依しているだけで

清水飛鳥さんはもう死んでいる。



俺はそれを言えないでいたし

言わなきゃならないと思っていた。

けれども、椎葉さんがどうなるのかも

分からないし、俺がどうするべきなのか

わからなかった。



ばあちゃんは

俺の意味不明な悩みをニュアンスで受け止めた。



「何だか分からないけどねぇ。世の中は事実だけが残るんだ」


「事実だけ」


「世間様にはねぇ、その事実しか分からない。でも、その事実に至った理由を知っとるのは当事者だねぇ」



ばあちゃんの言いたい事は

分かるような、分からないような・・・



「んだからねぇ。事実しか知らない人には、理由を教えてあげる必要があるんだと、わたしゃ思うね」


ばあちゃんはそう言いながらお茶を飲む。

俺の意味のわからない質問に

ばあちゃんから求めていた答えが返ってくるとは

思っていない。


でも、俺はそれを聞いて

清水さんに会いに行かなきゃならないって

そう思った。



俺は清水さんから逃げていたんだ。



椎葉さんのこと・・・妹さんのこと。

ちゃんと言わなければならない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ