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ディストラクション・インベーダー・ラヴコメディ  作者: 大野春
【scene:09】 ディストラクション・インベーダー・ラヴコメディ
107/119

(107)大スター



解放されたら、僕は優先順位をつけて

訪問したい場所がいくつかあった。


重要度の低いものが最優先。

重要度の高いものが低優先。

というか、難しい事は遅くまで取っておきたいんだ。



僕はとりあえず、塹江さんのいる

会社の前にいた。社長室に入る。



「お出ましか。大スター」



塹江さんは笑っていた。

そして僕を大スターなどと、呼ぶ。


「大スター?」

「地球を救った救世主だ。ネットは大騒ぎ。あと、俺の会社の株も爆上がりだ」

「ほ、ほんとですか?」

「ありがとう」


結果的に、塹江さんに貢献出来たのなら・・・


「やっぱり、自立したいんです。塹江さんにお世話になった分も、その、株価のやつで恩返し出来たと思うし・・・」



塹江さんはにやけた。

僕の言葉に対して

分かってないなぁ、そんな顔をしている。



「金で恩返しして欲しいつもりじゃない」

「え?」


「世間は売名だって言ってるけれど・・・いや、確かにそうかもしれねえけどさ、俺がお前を保護しているのは、金の為じゃない」


「えっ?・・・じゃあ、なんなんですか?」



「父親になってみたかったんだよ」

「父親・・・」

「お前に拒否されちゃったから、兄弟みたいな感じだけどさ」



そこから塹江さんは身の上話をしてくれた。

仕事を理由に恋愛から逃げ



「俺がタネナシだって分かって、離婚寸前になったんだよ。ソイツは子育てをする事を望んでいたんだ。籍は抜いてないけど、別居婚状態だな」



塹江さんが言ってるのは

子どもを産む為のハードルが高かったと言うことだ。



「俺もまた、子どもを育てたいって思ってた。でも、無理だった。だから、お前を引き取ってみた。でもよ、俺以上に子育てをしたかったのはリコのほうだ」



「リコ?奥さんの名前ですか?」



どこかで聞いたような・・・

あれ?


「ああ。お前を義務教育まで育ててくれた女だよ」

「なんで、辞めちゃったんですか?」

「子育てが思ったのと違ったらしいぞ。難しいよな」



僕は後悔した。



真島さんが距離を取っているがしたけれど

結局・・・

真島さんから距離を取っていたのは

僕の方だったんだ。


あの頃の僕には、

そんな事は考えられなかった。



「あのさ、自立はしないで欲しいんだよな」

「えっ?株価じゃダメですか?」




「俺の子どもになれよ」




塹江さんはそう言った。

たぶん、ちゃんとした

手続きをして。そして

今日みたいな会話が出来る

そんな距離の近い付き合い方。

塹江さんはそれを望んでいた。




「ま、いつまでも待ってるし、親がふたりいたって構わないからな」



ストレートに返事をしない僕に

塹江さんは少しがっかりしていた。



「ま、まずは親と折り合いをつけてこい」



背中を叩かれる。



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