(102)人間は不完全
「椎葉さん!」
僕は彼女の名前を呼ぶ。
国営放送のスタジオに
少し手荒な方法で侵入した。
退屈なスタイルで
その時を待っている椎葉さん。
「久しぶりだの」
「久しぶりとか・・・そうじゃなくてさ」
突然テレビに出たと思ったら、
地球を破壊する?
こいつは何を言ってるんだ。
よくわからない事だらけだ。
「地球を壊すつもりなの?」
僕は椎葉さんに質問をする。
おそらくだけど、この映像は中継されている。
たぶん。
「そうだの」
「なんでだよ」
「説明はしたつもりだの」
「聞いてない。分かりづらい。ちゃんと教えてよ」
「みーは神」
「知ってるよ」
「神は概念。憑代がなければ実体にならない」
「それも聞いたよ。だから、死んだ人に取り憑いてるんだろ?」
「そうだの。みーの目的は憑代であるゆー達生命体の進化」
「進化?」
「みーは何度も惑星を破壊してきたの。破壊する度、生命体は違う惑星に逃げては進化してきた」
「だからなんだよ」
「みーの理想の憑代を手に入れるまでは、みーは破壊を繰り返すのさ。破壊なくして、創造は無い。人間は不完全体だからの」
人間は不完全。
確かにそう思うけれど。
僕達はこの地球の頂点に立つ生命体だ。
「確かにそうだと思うけど。椎葉さんの都合で地球が破壊されるのは、意味がわからないよ」
「みーからすれば、ゆー達が拒む理由が分からんの」
「当たり前だろっ!」
そうだよ。
地球が終わっちゃうって事は
それは僕たちが死ぬって事だ。
「死んじゃ・・・殺しちゃダメなんだよ・・・」
僕はそう言いながら、手のひらを広げていた。
「みーと戦う気かの?」
僕は怒りがおさまらない。
理由はふたつあった。
「椎葉さん。手を組むって話をしたよね?」
「そうだの」
「なんなんだよ、あの約束!結局地球が終わるなら、僕には何のメリットも無かったじゃないか!」
「そうだの」
「そうだの!じゃないよ!僕が頑張ってきた意味がない!」
「なら、ひとつ、望みを叶えさせてやるの」
椎葉さんが提案する。
まさかの提案。
え?義理堅いの?
「但し、地球を破壊しないで、ってお願いはダメだからの。あと、ミーを破壊するとか、ダメ」
「勝手すぎるだろ、条件が」
「別にそもそも、ゆーに褒美をやろなんて言ってないからの。オマケってだけだの」
腹が立つ。
こんなに可愛い顔してるのに。
地球は終わるかもしれない。
だから僕は自分の感情を
怒っているもうひとつの理由を
彼女に言い放つことにした。
「願い事の件は後だ!言いたい事がもうひとつある!」
「は?何言ってんのさ?」
「どうして勝手にいなくなったんだよ!」