(10)凄くて怖くて可愛い
またしても眠れなかった。
昨日、あんな事があったから。
音を立てて、破裂して崩れる人。
その姿は脳裏に焼きついた。
「なんだか寝不足じゃないの?」
リビングで朝食を取る。
僕を心配するこの人は、真島さんと言う名前。
36歳の女の人で、20代後半に見える。
ノーメイクでこれだ。
幼いというよりは、老けていないという顔。
この人は、僕の世話係だ。
「ちょっと夜更かししただけ」
たまに、コミュニケーションを取ってやらないと。
この人が可哀想だ。
別にこの人は僕に対して
愛情を持っているわけじゃないと思う。
ただ、淡々と、課せられた任務をこなす。
そんな冷たい奥底が見える人だ。
「寝れないのですか?」
「まぁ・・・」
真島さんがどうかは別として
僕は彼女に心配をかけたくない。
「まぁ、大丈夫」
そう言って家を出る。
景色は切り替わる。
いつもの学校へ向かう。
いつもの通学路。
何一つ、変な事はない。
僕はなんとなく、指で銃を使った。
それを
電信柱
通りゆくバス
ボロアパート
ガードレール
に向けて撃つ。
もちろんそれらは破壊される事は無かった。
僕は昨日の事を思い出す。
宇宙人は僕らと同じ姿をしていた。
流行を作り出して地球人を操ろうとしている。
そんな宇宙人を破壊神の椎葉さんは
破壊しようとしている。
・・・そういえば、なんで破壊するんだろ。
どうして破壊神は地球の味方をしてくれるのだろうか。
椎葉さんの力は凄い。
公園の滑り台をぺちゃんこに出来る。
そして宇宙人をバラバラに破壊できる。
凄いけれど怖い。
怖いのだけれど、椎葉さんは可愛い。
神様だって知らなければ、ただの可愛い子だ。
状況を整理する。
僕はそんな破壊神と手を組む事になった。
手を組んでクラスメートの宇宙人である
三依小雨さんを破壊するのが目的だ。
小雨さんは創造神は付き合っている。
だから、創造神のパワーとやらで
小雨さんは破壊出来ないらしい。
そういうわけで僕が小雨さんを
創造神から引き離す。
その方法は、恋。
僕が小雨さんを寝取るのだ!
宇宙人と創造神の恋愛関係を解消し宇宙人を破壊する。
そうすれば、地球の平和は守られる。
その命運が僕にかかっている。
そう、思っていたのに。
僕の心は揺れ動いている。
だって・・・宇宙人だとしても・・・
僕からすれば三依小雨さんはクラスメートだ。
あの綺麗な顔が破壊されるところなんて、見たくない。
破裂して、バラバラになる。
「おはよう」
いつものように
可もなく不可もない挨拶をしてくる奴がいる。
・・・って、え?
「おは・・・よう・・・?」
「おはよう。昨日、可愛い女の子と歩いてるとこ、見たよ?」
後ろから声をかけてきたのは、三依小雨だった。