娘視点
がしゃん。
それはテーブルにあったリモコンが壁に投げつけられた音だ。
「うるさい!口出しするな!!」
弟が父と母にそう言った。二人とも話し合いをしようとするけれど弟は階段を駆けあがって扉を乱暴に閉めて部屋に入った。
「ああ、どうして?」
あんな子じゃなかったのに。母が続けたかった言葉が手に取るようにわかった。ゲームが好きでおとなしくて内気だけれど、家族思いのいい子だったのに。あんな乱暴な言葉遣いをする子でもなかったし、ものを投げつけたりもしなかったのに。
反抗期だから仕方がない?高校生の弟は確かに反抗期を迎える年頃だ。だけどこんなに人が変わったかのようになるだろうか?反抗期が特になかった自分を思い返してみてもよくわからなかった。
私たちの話など全く聞かないし、根気よく話しかけても「命令するな」というばかりだ。どうして?反抗期などではなく誰かに洗脳されていると言われた方がまだ納得ができた。
「きっと、受験のプレッシャーもあるんだろう。大学受験が終わったら落ち着くだろう」
父は私や母を慰めようとしているからか、そんなことを言った。
「そうね、きっとそうね」
そうだろうか。心の底からそうだとは思えなかった。でも、そうであってほしいと私も思っていた。
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