雨の日
雨が降ると「あの子」を思い出す。
遠い昔、僕は何処だか分からない場所で一人だった。
自分が何処から来たのかも分からなかった。気がついたらそこにいた。
前は他に誰かがいた気もするけどよく覚えていない。
とにかく寂しくて悲しくてたまらなかった。
そんな時に「あの子」と出会った。
一人でいた僕に近寄って話しかけてくれた。
それからはいつも一緒にいてくれた。
「あの子」と一緒にいると凄く楽しかった。
よく外に連れて行ってくれて、色々な所に遊びに行った。
たくさんお話や歌も聞かせてくれて、新しい友達も出来た。
でも何故か「あの子」と外に出る時はいつも雨だった。
僕はほとんど青空を見たことがなかった。
ある日、いつものように「あの子」と一緒に外に出かけた。
その日も雨だった。
着いた場所は知らない所だった。
床も壁も全部白くて、人がたくさんいて、そして、なんだか不思議な匂いがした。
すると突然「あの子」は僕を置いて何処かに行ってしまった。
僕は、今までも置いていかれたことは何度かあったし、すぐに帰って来ると思って待っていた。
ずっとずっと待っていた。
でもいつまでたっても「あの子」は帰って来なかった。
それでも僕は待ち続けた。
待つ以外に何をすればいいのか分からなかったから。
いつ帰って来てくれるんだろう。
「あの子」は今、何処にいるんだろう。
なんでだろう。
昔よりずっとずっと寂しいよ、悲しいよ。
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初投稿!
忘れられてしまった傘をテーマに書きました
ちなみに忘れられた場所は病院のつもりです