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茶会の終わり



「それでは皆様、本日はありがとうございました。」






にこやかに招待客を見送るエマ。


噂話に花を咲かせたお茶会も恙無く終わり、私はラングのエスコートで他の招待客と共にガーライル伯爵邸を後にしようとしていた。







「リリルフィア!」






庭園から玄関までの道中で立っていたメイベルが、私達を見つけたらしく駆け寄ってきてくれる。








「メイベル、今日はありがとうございました。」


「話し足りないわ。また遊びましょ?」







手を取り合って話す私達に、周りは笑顔を見せながら通り過ぎていく。本当はテーブルを共にして話す予定だったけれど、タチエラの要望を叶えるためにメイベルは譲ったのだ。私もメイベルと同じ気持ちだったので二つ返事で了承する。







「また手紙を送るわね。予定の空いている日に会いましょ!」


「ええ、お待ちしています。」






お茶会などの公式な場でなければ、約束もしやすい。1ヶ月前までのところで約束を取り付けなければならない茶会や夜会と違って、非公式ならば手紙のやり取りさえ出来れば一方的に日時を伝えるだけで訪問する人も居るのだから。


勿論メイベルはそんなことはしないので、私の返事を待って予定を決めてくれるでしょう。








「リリルフィアちゃん、今日は楽しかったわ。」


「タチエラ様、こちらこそ有意義な時間をありがとうございました。」


「夜会には出席するのかしら?」


「はい。父に連れてきてもらう予定です。」







横を通ったタチエラが声をかけてくれ、私も笑顔で対応する。メイベルとも言葉を交わしたタチエラはすぐにその場を去っていった。







「随分と仲良くなったのね。」


「ええ、まあ。ラングと私の主従関係がお気に入りらしくて。」






私の言葉にラングと私を見比べたメイベルは、「勝手に想像するには便利…?」と大変失礼なことを言ってらっしゃる。


それであらぬ噂を流されたら堪ったものではない。茶会の始めにタチエラが興奮した結果か、茶会が終わる今ラングと私に視線を向けるご令嬢がチラホラいる。彼女たちがどう思って視線をこちらに寄越しているのか判断しかねるけれど、不利な噂じゃないことを願うばかりだ。








「またね、リリルフィア。」


「はい、また。」






小さく手を振り合って別れ、私はここへ訪れる時にも使用した馬車を探した。すると一つの見慣れた馬車の側に銀髪の少年が落ち着かない様子で立っていた。


そちらへ向かえば、私達に気づいたアルジェントがパッと瞳を煌めかせて「お帰りなさいませ!」と礼をしてくれる。








「戻りました。待たせてしまってごめんなさいね。」


「いいえ、そんな!」







慌てて否定するアルジェント。その通常運転な彼の様子にどこか安心してしまい、ホッと息をつく。有意義に過ごす事ができたとはいえ緊張はあって、アルジェントを見るとそれが解れるようだった。







「中で待っててくれてよかったのに。」


「その、リンダ様が『目立つから丁度いいでしょう』と仰って…」







確かにアルジェントの銀髪は珍しい上に光に照らされれば輝きが増して目立つ。だからといって人と接することをまだまだ苦手とする彼を馬車の外、茶会を終えた夫人令嬢のあるく場に置いて目印にするとは、我が侍女ながら容赦が無い。


今でもアルジェントにチラチラと視線を向けては扇で口元を隠して話す女性たちが見えるだけでも3組。他にもラングを見て話している方たちも居るので、つい『我が家の使用人は目立つなあ』と私も二人を見てしまう。







「お嬢様、どうされましたか?」


「いいえ。貴方達は目立つのね、と。」


「リリ様、自分も目立ってますからね!」







ラングの指摘に首を傾げれば、彼は視線を一方へ向けて私に示す。それを追えば「きゃあっ!」と悲鳴は悲鳴でも興奮したような声が。


数名の令嬢がこちらを見ており、その視線は紛れもなく私と目が合っている。ラングの言うとおり、私も注目されているみたいだ。思い当たるのは本日のタチエラの蒔いた種が咲いたか、はたまた別の理由か。


視線をラングへ戻すと『ね?』と目が言っている。他の場所に目を向けても先程の令嬢たちと同じような反応が2割。少し感じたチクリと刺さる様な視線に、私は周りの観察をやめた。…私は何も見ていないわ。







「…帰りましょうか。」






何にしても長居は無用。私の声にアルジェントが馬車の扉を開き、ラングは手を取って私を馬車へ促してくれた。


それに対して一際大きな悲鳴…歓声?が聞こえたけれど、素早く馬車へ乗り込んで聞かなかったことにした。



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