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親友のメイベル





「アルジェントね。私はメイベル・パレッツェ・ガーライルです。リリルフィアとは親友なの!」






ふんわりと微笑むメイベルは可愛らしい容姿を更に魅力的にして私にも笑みを向ける。『親友』の一言が嬉しくて、私も笑みを返した。


同時に、事情を知りながらアルジェントへ分け隔てなく接する彼女への尊敬が絶えない。元でも奴隷なアルジェントなので、興味本位で招いて終わりという可能性も捨てきれずに内心少し不安だった自分が恥ずかしい。






「リンダはお久しぶりね。」


「お久しぶりにございます。」


「それと…」






次いでリンダに笑みを向け、反対側に控えているラングへ目を向けるとメイベルは一瞬目を細めてからそのままニッコリと笑みを深めた。









「イエニスト子爵も、叙爵の時以来ですわね。」


「…はぃ…」


「パパとはあの後にも何度かお会いになったとか?」








きっと推薦状のことだろう。二人のやり取りを見ていると、2年前を思い出す。メイベルと知り合って間もない頃、ラングが騎士団へ入るまでの僅かな間に初めて会った二人のやり取りの面白いこと。








『リリルフィア嬢と友人のメイベルですわ。』


『俺はリリ様の…あ、親友!ラングです!!』


『なっ!私だってリリルフィア嬢とは親友ですわ!』


『じゃあ俺は大親友です!小さい頃からリリ様を知ってますもーん!』


『リリ、様…私だって!!リリルフィアとはこれから親友になりますものお!!』









平民と貴族、成人間近の青年と社交に出て間もない少女、16歳と8歳。何もかもが違う二人の、張り合う意味がわからない会話は『リリルフィアはどうなんですの!?』というメイベルの半泣きな問いかけによって私に飛び火した。








『…比べる方が間違っておりますのに。』








本音を言っても納得しない二人に『友達の友達も、仲良くなったら素敵ですわね。』と言えば黙ってくれた。


それからラングがガーライル伯爵の弟子とメイベルは知り、ラングはラングでメイベルがガーライル伯爵の娘だと知ってからはお互いの上下関係が決まったようだ。








『リリ様!遊びましょ!』


『あらラング、パパの稽古がまだですわよ。』


『え!?またいらしてたんですか!?』







唐突に現れるラングと、タイミング良くラングの来訪に居合わせるガーライル親子。


私と遊べなくてしょんぼりしているラングの背をニッコリとメイベルの良い笑顔が見つめていたのは、私だけの秘密だ。









「前々から聞いてはおりましたけれど、本当にリリルフィアの騎士になったのですね。」


「はい!約束してくださっていたので!!」


「貴方の一方的な、でしょう?…リリルフィア、そんなもの反故しても良かったでしょうに。」









会話の矛先が私に向き、私は「優秀な騎士が望んでくれたので、光栄な限りですわ。」と返す。手段は脅迫まがいの推薦状だったけれど、ラングが護衛してくれる事自体は頼もしいので雇うことに悔いはない。


私の表情で察したのか、メイベルは面白くなさそうにラングと私を見比べて、それからアルジェントにも目を向けた。








「…リリルフィア、アルジェントの仕事は執事なの?」


「いいえ、正装としてこれを着ているだけで本来は下男ですわ。まだ雇って2ヶ月くらいですもの、彼の仕事については父がジャニアに一任しているみたいですし。」








私の言葉に少し考える素振りを見せたメイベルは、アルジェントに上から下まで観察するような視線を向ける。








「細いけれど…アルジェント、貴方おいくつ?」


「…?13です。」


「そう。事情があったことも含めてこの身長…まだまだ伸びそうですわね。ラングなんてすぐ追い越しそう。」








先日も騒ぎの種となった“身長”の話に、ラングは「くっ…!!俺だって、俺だって!!」と独りで呟いている。そんなこと気にしないメイベルは暫くアルジェントの観察をしていたかと思えば、パッと私に顔を向けてそれはそれは良い笑顔を向けてくれた。








「良いことを思いつきましたわ!!」







ふふふっ!と楽しそうなメイベルだけれど、思いついたことを話してはくれない。


リンダと目を合わせて首を傾げていれば、客間から扉を隔ててノックの音と「お嬢様、皆様ご到着なさっておいでです。」と茶会の招待客が来始めたことを知らせる声が響いた。







「まあ!もうそんな時間?」


「メイベル、それで思いついたことって?」


「ふふっ!まだ準備と根回しが必要だわ。整ったら詳しく教えるわ!!」







「お庭に行きますわよ!」と背を押され、メイベルの思惑は聞けることもなく、私は客間から出た。





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