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一周回って

毎日投稿を読んで頂いている読者様へ


これは6月20日の投稿になります。

6月21日の投稿はお休み致しました。

詳しくは活動報告に書かせて頂きましたので

そちらをご覧いただければ幸いです。


ドタバタと廊下から音がしたのは、アルジェントが謎の逃走をして少ししてからだった。




「何事かしら?」




微かに声が聞こえ、段々こちらへ近付いているのがわかったので私はリンダに「何かあったらよろしくね。」と傍へ来てもらう。


無力な私は歯痒くも誰かに守ってもらわねばならない立場にある。危険が少ない伯爵家であっても、有事の際の心得は父に口酸っぱく言われているわ。




『素直に守られることは、それだけ護ってくれる相手に信頼と行動の余裕を与えられるんだよ。』




そう言われたら、大人しく従うしかないじゃない。




「この声…アルジェント?」


「そのようです。」




近づく音と聞こえた声が知った人物だったことで、私は肩の力を抜く。複数聞こえる足音はアルジェントの悲鳴のような声と相まって、現状を雄弁に教えてくれた。




「追われてるみたいね。」


「そのようですね。」




どうにも緊張感が戻らないのは、アルジェントの声の他に「頑張れー!」という応援の声が聞こえたからで。


足音は私の部屋で止まるとコンコンコンコンッ!!!という軽くても必死なのが分かるノックが響いた。




「アルジェントでしょう、入れてあげて。」




リンダに扉を開けさせようとしたのだけれど、向こう側で「ひぇえええええ…っ!!!」という一際大きな声が響いた。


リンダが扉を開ければ、チラリと見えた銀とオレンジ。


一瞬開けられた扉は再び閉められた。




「何もありませんでした。」


「流石にそれは可哀想よ。」




現役の騎士と成長中のアルジェントじゃ、勝ち目が無い。何処から“おいかけっこ”が始まったかは分からないけれど、寧ろよくここまで逃げられたものだと褒めたいくらいだ。


私の言葉に再び開かれた扉からリンダが、ヨロヨロとしたアルジェントとムスッと拗ねたラングを連れて戻ってきた。


見た目はアルジェントの身体に異常なさそうなので、大事にはなっていない様で安心した。




「それで、何があったのか言えるかしら?」




私の問いかけに誰も答えない。


仕方ないのでラングに「何でアルジェントを追いかけていたの?」と聞いてみる。




「だってリリ様!!この人、この人…!!」


「この人じゃなくてアルジェントよ。」


「アルジェントが…アルジェントがあ…!!」




アルジェントを指して悔しそうなラング。今まで見たことのないその表情に驚き、そんな表情になるような事をアルジェントがしたのかと疑問が浮かぶ。


まだまだ人前だと緊張するアルジェントが、他者を貶すとは考えにくい。私は唇を震わせるラングの次の言葉を待った。




「…俺と背え、変わんない…!!」


「「「…」」」




膝をついて本当に悔しそうな彼だけれど、私はリンダと目を合わせて首を傾げる。


確かにアルジェントは最近成長期なのか少しずつ伸びていると言っていた通り、平均の男の子たちよりも成長が良いのはジャニアも言っていたことだ。けれどラングとはまだ差があるし、ラングだって平均よりは低いが小さいとまではいかないので、気にするほどではないと思うのだけれど。




「変わらないって、ラングの方が高いでしょう?」




私の言葉にラングが今度は私を睨む。その目尻には涙が溜まっていて、彼はかなり気にしていることが伺えた。


アルジェントはと言うと、顔が『追いかけられたの、それ…?』と若干引いた顔をしている。




「だって俺が13の時、リリ様くらいだったもん!!」




私はラングよりも頭一つ分低い。私とラングを見比べて、アルジェントが「少しの間でそれだけ伸びるんですね…」と呟いた。


その言葉に暫し沈黙が部屋に落ちる。“少しの間”という曖昧な表現は人それぞれに長さが違うけれど、私やリンダはアルジェントの言葉の意味を理解していた。


そして言葉を聞いて目を細めたラングも、気付いている。


聞きたくないわ、と思いつつも他の誰も聞かないので私が聞く。




「アルジェント、ラングは幾つだと思っているの?」


「え?同じくらいって、先程言っておられて…」




ちらりとラングを見て、その表情が剣呑さを増していることに気づいたらしいアルジェントは、自身が思い違いをしていることにも考え付いたようだ。




「ら、ラングさん、お幾つでしょうか…?」




恐る恐る聞くアルジェントは、本当に成長したと思う。


怯えた様子は変わらないけれど、怯えるままじゃなくて自分で行動することもしっかり身についている。屋敷でジャニアたちが指導しているおかげだわ。


けれど、今はその勇気が仇となっている。




「18だけど、何。」




吐き捨てるように言ったラング。アルジェントが年齢の間違いをしたのはきっと、騎士団へ所属することを認められる年齢が16からと成人した者に限られることを知らなかったのも理由に含まれるのではないだろうか。


知っていたらまず16以上の年齢だとは分かったわけだし。




「アルジェント、ラングは16から2年騎士団に所属していたのよ。だから『騎士』という役職となるの。」


「そ、そうなのですか…!?」




騎士団に所属した者が馬術を身につけ、戦線において馬と共に戦うから『騎士』を名乗ることを許されるのだけれど、その違いを知らないのは目指さぬものであれば無理も無い。


あら?だったらちゃんと説明しなかった、私のせいだわ。



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