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予定の相談


結局仕事は終わらなかったようで、父と会えたのは夕食の席でだった。疲れたような父と、それを後ろで怒りを滲ませて睨むジャニアは立場が今だけは逆転しているようだ。




「お仕事お疲れさまです、お父様。」


「いや…話を聞いてあげられなくてごめんね。」


「お仕事が優先ですわ。私はこうして夕食の席で話すことも出来るのですから。」




申し訳無さそうな父に笑って言えば、父はちらりとジャニアを見て「ジャニアと同じこと言う…」と何やら呟いている。


ゆっくり二人で話すのも勿論嬉しいが、仕事が滞ってまでそれを望むようならば伯爵家の娘として責任感がなさ過ぎるというものだ。


それに、ジャニアから賄賂も貰っているしね。




「リオンはまだ部屋で夕食か。」


「…そのようですわ。」




今まで3人で共に夕食を摂っていたのだが、ある日からリオンは部屋に食事を運んでもらうようになり、顔を合わせる回数が減った。


その“ある日”とはアルジェントが来て、私がリオンに言い逃げしたあの日だ。あれから食事の場で会うことはなくなり、偶然書庫で会っても避けられる。


自分で蒔いた種とはいえ、兄のように慕っている彼に避けられるのは辛い。




「…もうリオンお兄様と、お話しできないのでしょうか。」


「リリルフィア…大丈夫だよ。リオンには少し、時間が必要なだけだから。」




席についている私の頭を撫でてから、父は私の対面へ腰掛ける。そのタイミングで父に食前酒が運ばれた。勿論私は飲まないので果実水。




「さ、食べながら話そうか。メイベル嬢から手紙が来たんだって?」


「はい。帰国したら茶会をするので、招待すると。詳しい日程はこちらです。」




気を取り直して、側に控えていたリンダにメイベルからの手紙に同封されていた招待状を手渡し、ジャニアを経由して父へと渡る。


面倒と思うが、直接手渡すにはこの食堂のテーブルは大きいのでどうしてもこのような形になる。部屋に置かれる丸テーブルなら近いから問題ないけれど。


招待状を読む父は食前酒を傾けつつ、ちらりと私を見る。その姿の絵になることと言ったら、この場にいないリオンが見れば『誰に色仕掛けしてるんです?叔父上』とか言いそうだ。




「何時もより早くなるね…リリルフィアは大丈夫?」


「問題ありませんわ。来て頂いている先生方もシーズンに合わせて王都へ行かれると聞いていますので。」




私だって本を読んでばかりじゃない。家庭教師を招いて日々勉強しているのだ。淑女に必要なマナーやダンス、楽器の手習いは勿論、一般教養に加えて周りの淑女よりも多めの座学を父から勧められるままに受けているので、先生方からは『秀才』などと持て囃されている。


先生方は皆が準男爵から伯爵家の、中流貴族以下で社交の場にも出る方ばかり。独身の先生は『そろそろ、適齢過ぎてしまいますの…!!』と涙ながらに訴えていた。誰か見初めてあげてほしい。




「なら決まりだね。王都の屋敷に伝達して、半月後には向こうへ行こう。ジャニア、いつも通り警備兵と使用人の割り振りは頼んだよ。」


「畏まりました。」


「あのっ、お父様。」




サクサクと半月後には王都入りが決まったは良いけれど、おかげでメイベルとの約束を言うタイミングが無かった。慌てて呼べば「ん?」といつの間にか来ていた前菜に手を付けながら、父は聞いてくれる。




「メイベル様から、アルジェントに会いたいと…」




ピタリと父の手が止まる。後ろに控えていたジャニアも父に話したいことがあるとは言ったけれど、その内容までは伝えていなかったので不思議そうな表情を見せた。


メイベルの手紙について伝えると、父は苦笑いして「俺のせいだね。」と謝罪した。




「マック…ガーライル伯爵の滞在している国では奴隷が我が国よりも多いと手紙に書いてあってね、その繋がりでリリルフィアの勇姿を話してしまったんだ。返事には『リリルフィア嬢は相変わらず聖女のような子で俺は感動した』と褒めていたよ。」


「お父様もお父様ですが、ガーライル伯爵もお手紙で饒舌になられるのは相変わらずですのね。」




勇姿ってなんですか、とは聞かないでおく。ガーライル伯爵は普段、無口な方で会っても『息災のようですな』くらいにしか言わないのに、父の手紙では随分とペンが進むようだ。


前に父から聞いたときには、メイベルの自慢が2枚に渡って綴られていたらしい。それに父も3枚で返したと話していたのだから、メイベルと一緒に呆れて苦笑いし合ったことがある。




それはさておき、アルジェントの同行をどうするかだ。




「使用人の仕事には影響ないだろうけど、ジャニアはどう思う?」


「…賛成致しかねます。」




父の問いかけにジャニアは難しい顔をした。まだ屋敷に来て間がない上に、教養も不十分、粗相があってはいけないという理由は大きいが、ジャニアはそれよりもアルジェントの精神面を挙げた。




「雇い主である旦那様やお嬢様にも慣れておらず、我々にすら緊張する始末。最悪の場合、緊張で倒れかねません。」



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