9話 発覚
私、田中すずは悩んでいた。
昨日、鈴木くんと伊藤くんと話した通り放課後喧嘩してしまった友人相羽さんの元を訪れた。仲直りはできたと思う。
でも、変な自信満々な先輩を紹介をされ、一緒に帰宅させられた挙句に告白されてしまった。
目の前の人間の友人の悪口を言うような人間とはお付き合いしたくないと思い断った。
「はぁ〜」
1時間目が終わり着抜けたのか、気疲れなのか、ため息が漏れてしまった。
「やっぱり今日の田中さんは少し元気がないように見えるけど、大丈夫?もし、気分が優れないなら保健室行く?次の授業の先生にはちゃんと伝えておくから。」
鈴木くんは優しいな、こんなため息ついてばかりの私を元気つけようとしてくれているなんて。
「ううん、心配してくれてありがとう。昨日ちょっと嫌なことっていうか、ちょっと悩んでいてね。」
「悩みか……もし、田中さんが良ければだけど、今日お昼ご飯食べる時に僕と旭が相談に乗ろうか?男しか友達いないけど……」
「うん、正直誰かに聞いてもらいたいかも。悩みって言っても仲直りした友人とこれからどう接したら良いかがわからなくて。」
「そう、それならよかったよ。僕が力になれるとは思えないんだけど、頑張るよ!」
鈴木くんは自分には解決できないと思ってるみたいだけど、話を聞いてもらえるだけで嬉しい。それによく考えると告白を断ったことも、後悔とかはしていない。案外、相談というよりも自分の話を全く理解しようとしてくれなかった相羽さんに対する愚痴を聞いて欲しかっただけかもしれないな。
「ありがとう、鈴木くん。もしかしたら相談というなの愚痴になるかもしれない……」
「なにそれ。誰でも愚痴を言いたくなる時があるよ。そういう時は思いっきり発散するのが良いよ。僕も嫌なことあると大声で歌ったりしてるしね。」
「そうなんだ。なんか想像できないな。」
お互いに笑いながら会話を続けているうちに、私の嫌な気持ちは無くなっていった。
昼休みに話す内容は相羽さん達の言ってた鈴木くんの悪口は隠しながら言わないといけないな、と考えながら午前の授業を消化していった。
◇◇◇
「それじゃ、旭と合流してから愚痴大会でも始めようか。」
「うん、そうだね。スッキリしにこうか。」
二人で前回お昼ご飯を食べたところに向かおうと扉に向かった。
ガラガラと扉が開く。以前にも感じで扉の開く音を聞いた事がある。
「よぉ、すずちゃん。一緒にご飯食べようぜ。俺たち付き合ってんだしさ。」
そんな言葉と共に現れたのは近衛湊であった。近衛湊の一言はすぐにクラス中を駆け巡った。当然というべきか、私と近衛湊を合わせた相羽さんはドヤ顔で近づいてきた。
「やっぱり、田中さん先輩とくっ付いたんだね!よかったね!せっかく彼氏がきたんだから早くご飯食べにいったら?クラスの方は私に任せてさ!」
自信満々に言う物だから私は反応する事ができなかった。自分の隣に鈴木くんがいることも忘れ、呆然としていたのだった。
「おら、そう言うことだからきもいお前は一人で便所で飯でも食ってな根暗!ギャハハ。」
私が呆然としている中近衛湊は鈴木くんに絡んでいった。まずいと思い私が反論をしようとすると鈴木くんが言った。
「う〜ん、流石に僕もトイレでご飯は食べないかな。友達も待たせてるし、田中さんはどうする?」
馬鹿にされたと言うのにいつも通り受け答えしていたのだ。てっきり鈴木くんは気が弱いのかと思ったけどそうではないのかもしれない。
「いや、鈴木くんと伊藤くんと食べるよ。そもそも、近衛先輩とはお付き合いしてないしね。」
「えぇー!どう言うこと!田中さん!付き合ったんじゃないの?」
はっきりと近衛湊との関係を否定した私に相羽さんは驚きながら聞いてきた。
「うん、昨日の帰り道で告白されたけど、正直苦手だから、断ったんだ。」
「そーなんだー」
一応私の話を聞いてくれたみたいだ。
当然みんな私の話を聞いていたわけで、振られたのに何で近衛湊はさも付き合ってると偽ってこのクラスへ来たのか、気になるところである。
「そんなの決まってんじゃん。すずがただの照れ屋なだけだよ。」
こんな変な言い訳で騙される人間はいない。
「そうなんですね!なんだ田中さん。照れてるならちゃんと言わないと先輩が傷ついちゃうよ!」
何と信じるものは実在したみたいだった。どうこの場を収めようかと悩んでいると扉の向こうから声が聞こえた。
「お〜い、拓郎。お前遅すぎ、何でまだ教室にいんの?」
どうやら、私たちが中々現れないから教室まで伊藤くんが来たみたいだ。
「あっ、ごめん旭。この人が田中さんとご飯を食べたいってやって来たんだけど、なんか話が噛み合ってなくて。」
「この人?近衛先輩じゃないですか。どうしたんですか?」
「あぁ?伊藤か。俺がすずと飯食いに行こうとしたらこいつが邪魔して来てよ。」
「どう言うことだ?」
突然合流した伊藤くんに今まで起きた話を説明した。
「結局田中さんは先輩よりも俺らとご飯食べようと思ってるんでしょ?ならもうそれで良いじゃん。本人がそっちが良いって言ってんだから。」
「おいおい、伊藤そんなの彼氏の俺が許せるわけねぇじゃねぇかよ。」
「でも田中さんは付き合ってないって言ってますよ。」
「さっき説明したろ?」
どうやらこの話は永遠に平行線な案だろう。私が先輩についていけばもっと早く解決しただろう。鈴木くんと伊藤くんを巻き込んだことを後悔していると、伊藤くんの口から衝撃な提案がされた。
「先輩も俺も軽音部でしょ?正直このままだと永遠にここで話さなくちゃいけなくなるんでギター対決で白黒ハッキリさせんのはどうです?」