41話 拓朗くんって実は……なんじゃないのかな?
こんにちは!田中すずです!今日!todayは拓朗くんのバンドの演奏会にご招待をいただきましたので、駅前で近藤くんと南ちゃんと合流して会場に向かいます!とても楽しみだったので今日は少しテンションがバイブスアゲアゲな感じです。
ふぅ〜、落ち着きましょ〜。落ち着きました!
さて、現在人気急上昇中のバンド『クライス』……。今回の拓郎くんのライブはこの『クライス』のコピーバンドらしい。らしいってい言うのは私が人伝に聞いて確信を持てていないから、というものでは無くあるとんでもない考えがあるからである。あの日、決闘の演奏によって学校のみんなが注目した拓郎くん。私はあそこに『クライス』の設立者であるギタボのタク様を見た。今までタク様にガチ恋をしていた、そんな私が拓郎くんの演奏で一目惚れしてしまった事実を隠すためにそんな妄想をしたのかと思った。でも、一度思い込むとドツボにハマるっていうか……。オフの拓郎くんとタク様は全然違うけど、他もメンバーとかは流石に誤魔化せないだろう。タク様以外のメンバーは3人いる。ベースのヒメにギターのクロエ、ドラムのナオがいる。それぞれとてもキャラが強烈で、ヒメはめっちゃ可愛くて中性的な声をしている。『クライス』を組み始めた頃のSNSの運用はヒメに任せていたところ、メディア欄が自撮りだらけになっててライブの告知をしてもなんかの配信者なのかと勘違いされたっていう伝説がある。その後はSNSの運用はドラムのナオになったらしい。そのヒメも一部界隈では実は女装説が流れていたり、実は宇宙人で性別を超越している説など様々な説がある。ちなみに私はどの説も信じてない。本人がめっちゃ可愛くて、ベースが変態なことがわかっていれば良いと思っている。
次にギターのクロエは凛々しい姿のハーフらしい。変な喋り方をしているけどクロエ推しの人たちはクロエ語なんて言って話し方が段々似ていくらしい。学校や会社で発作のように出てきてしまう人のことをクロエ病だなんて言われているようだ。私はタク様推しなので発症はしていません。
最後はドラムのナオ!ナオはめっちゃ小さくて可愛い。ヒメは神秘的な不思議ちゃん?パステルな感じの可愛さ、クロエはとにかく凛々しい姿。2人ともすんごい美人さんなんだけど、ナオそんな2人とは違って女の子っぽい感じ。なんて表現すれば良いんだろう。う〜ん幼い女の子を見てる感じかな……ちっちゃいし。でも、ドラムを叩き出すとまるで人が変わる。あの小さい体のどこにそんな力があるのか疑問を持つほどに力強い音を出す。ドラムはバンドの大黒柱なんて言われ方をするけどナオの演奏を聴くと本当にそうなんだなって感じ取れる。ドラムを始めた理由は幼馴染のクロエがギターを始めたから始めたっていうのも可愛くて好き。
そんなタク様と3人のバンドは個性のおかげかMCは面白いし、演奏もえげつないほどに上手い。人気が出ない理由がないのだ。タク様は雑誌へのインタビューではこんなにすぐ人気が出るとは思わなかったが、人気が出たのは嬉しい。だけど調子に乗らないように注意していきたいって答えていた。うーん、タク様は意識が高いな。
そんな『クライス』にもまっだまだ秘密がある。それは『クライス』って言うバンドを結成した理由だ。みんな同じ学校の軽音部で組んでそのままデビューとかは結構ありえるけど、このメンバーは同じ学校でもないしそういう情報は解禁されていない。だから、彼らのバンドに向ける意識や演奏に対する思いなどなど……。そう言うのは本人たちも答えているがプライベートな話になると一気に謎になる。せいぜいわかっているのはナオとクロエが幼馴染って言うことだ。
まぁ、拓郎くんの正体がタク様だったとしても……って逆か。タク様の正体が拓郎くんであっても良いふらすつもりなんか無いし、私の気持ちの整理が着くだけ。タク様と拓郎くんが別人だったときはまたその時考えよう!
なんて言うか、同時に2人の人を好きになってるみたいで私、最悪だな。しかも話したこともないタク様よりも仲のいい拓郎くんの方がって考えちゃうのも最悪だ。自分のことがなんかよく分からなくなってる。今まで本気でタク様のことが好きだったけど拓郎くんに魅せられて拓郎くんのことを好きになっちゃったのも私の気持ちだもんな。うーん、今はいいや!せっかくの拓郎くんの演奏会を落ち込んだ気分で見るのも失礼だ。後で空に相談しよ。切り替え切り替え!
思考を続けるとドツボにハマるようにハマりかけた私は頭を振って空に全てを託した。最悪な私だけど、受けれてください。
「あ、すずちゃーん。こんにちは。ごめんね、待たせちゃったね。」
「おっす、田中。」
「こら!あんたが私が起こしに行くまで爆睡してたから遅れたんでしょ!ちゃんと謝りなさい!」
「だってよー、拓朗のライブだろ?んなもん楽しみすぎて寝れねーよ。ま、確かに遅れちまったのは本当だからな、すまねぇ、田中。」
「いいよ、いいよ〜。ていうかまだ約束の時間には間に合ってるわけだし気にしないで。」
「そうだよな!南はカツカツしすぎなんだよ。」
「なーによ。カツカツってそんな言葉聞いたことないわよ!私との約束の時間には遅れてたじゃない。まぁ、でもすずちゃんが気にしないなら問題ないわ。」
「そっか、ならもう行こうぜ。ここの近くなんだろ?会場。」
「うん、それじゃ行こっか。ちょっと早く出発しちゃうけどゆっくり行けるからラッキーだね。」




