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4話 初めての下校

「ん〜、まだ土曜日の疲れが残ってるなぁ〜」

午前の授業が終わり昼休みに突入した僕は、一息ついていた。

「わかる、わかるよ。そりゃあんな激しいライブして1日で体力元に戻すのはしんどいもんな。」

「だったらなんんで君は体育の授業があったのに僕よりが元気なんだ。」

「はっはっは、そりゃ鍛え方が違うからな。」

大声で笑いながら僕と会話をするのは中学からの親友伊藤旭(いとうあさひ)だ。学校ではクラスが違うため普段は昼食を一緒に食べるくらいしか関わりがない。しかしそれは鈴木拓朗と伊藤旭の関係である。学校が終わり帰宅すると僕たちは、『クライス』のタクとアサとして再会する。

そう彼がバンド『クライス』のベースである。だから、僕と彼の仲が良く親友であるのはある種当たり前のことなのかも知れない。

「拓朗、なんか田中すずに話しかけられたみたいだな。遂にタクってバレたか?」

ニヤニヤしながら聞いてくる旭に対して僕は普通に答える。

「バレてる訳ないだろ?もしバレてたら今頃ネットに書かれて炎上してるよ。あんな格好いい人たちの中にこんな陰キャが紛れてたら旭たちのファンに刺されて僕のファンに僕が袋叩きにされてるよ。」

「そんなこと……いや、確かにちょっとライブの時とは格好違うもんなぁ。」

「まぁ、旭の言ってることは全部事実なんだけど、人に言われると腹たつな。」

「だったらもっと髪とか整えてこいよ。」

「朝時間無いし、琳との時間を大切にしたいから……」

「なんだ、ただのシスコンか……」

中身のない会話をしながら僕たちの昼休みは過ぎていった。

◇◇◇

下校の時間となり、背伸びをしながら今日は久々に家でゲームでもしようと思いながら靴を履き替え校門に向かう。

僕の親友くんは軽音部でギターを練習してからいつも帰るため帰宅部の僕は基本的に一人で帰ってる。

「ねぇ!君、一緒に帰らないかい?」

声をかけられながら声をかけられた僕は突然なことに驚きながら振り返った。

「あ、どうも田中さん。驚いたよ。僕も一人だから、一緒に帰るのは問題ないけど方向とか大丈夫?僕電車で帰るけど。」

「あっ!家の帰り方違うの忘れてたよ……でも私も電車だから問題ないよ!高木駅で降りるけどね。」

「へぇ〜、僕は木野駅だから高木駅の次だね。案外近かったんだね。」

「そうだね〜。それとごめんね。朝また音楽の話しようって提案したのにできなくて。」

シュン……とした田中さんを見るのは少し、心が痛いと僕は感じた。

「いいよ気にしなくて、お友達との約束があったんでしょ?それにこうやって一緒に帰ろうって誘ってくれたんだから。」

「うん。そう言ってもらえると助かるよ。」

「田中さんはMinDが好きって言ってたけどやっぱり激しい曲が好きなの?」

「うん。でも激しいから良いんじゃなくて、低音が心臓に響くのが好きなんだよ。」

「あぁ〜、それはわかる。心臓に響くとなると激しくなっちゃうね。」

「だよね〜」

「そうそう君、心臓で思い出したけど、『hurts』もなんか最近新曲出してたよね。知ってる?」

「田中さん『hurts』も聴くんだ。うん知ってるよ。でも正直田中さんが聴いてるなんて思わなかったよ。」

「うんうんめちゃくちゃ聴いてるよ。『hurts』の話題振ったの私の方なんだけど、君が聴いてるのにも驚いたよ。」

そんな音楽の話題で盛り上がりながら僕たちは帰宅していた。

◇◇◇

田中さんとの会話をしながら帰宅した僕はかなりウキウキだった。

「ただいま〜」

「おかえり、おにぃ。今日はいつもよりもるんるん気分だけど、どう……」

「うん?琳、どうしたの?そんなに見つめて、僕の顔に何かついてる?」

「おにぃ臭い。早くお風呂入ってきて!そんな変な臭い匂いを家に充満させないで!」

「えぇ……そんなに匂う?今日体育とかなかったけど……」

「良いから早くいって!」

「う、うんわかったよ……」

大好きな妹に臭いと怒られた僕は沈んだ気分で脱衣所に向かうのだった。

もちろん、極限に凹んでいた僕はしっかり体を洗って、琳に臭いと言われないようにすることに全神経を集中させていた。

「私の格好いいおにぃから他の女の匂いが微かに……彼女?いやもしそうならあたしに相談するはずだし……」

いつもは兄には悟られないように好意を隠している琳だ。しかし、他の女の匂いをつけた兄を前に動揺して色んなことをぶつぶつ唱えてしまった。そのことを兄に気づかれたと思った琳だが、身体の匂いを解消することに集中していた拓朗の耳には何も入っていなかった。




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