37話 テスト後
ちょっとしたトラブルに見舞われたすずさんとの勉強会だが、その後は何事もなく、勉強会は始まった。
事前に宣言していた通り、すずさんは僕に数学の問題を質問していた。僕も同様に国語の問題を質問して問題を解決した。そんな感じで勉強をした僕たちは……ついに、中間テストを迎える。
緊張の日である。今回のテストは僕だけではなく、すずさんにも質問をして勉強をしたのだ。そのため、中途半端な結果は残したくはない。せめて、せめて数学だけでもすずさんよりも良い点を取りたい。そんなことを思いながら、僕たちの中間テストは過ぎていった。
◇◇◇
テストも終わり、結果も発表された。平穏な日々が戻ってきたと考えても良いだろう。
「おはよう、拓朗くん。」
「う、うん。おはよう。すずさん。」
「もー、まだ気にしてるの?」
「ん?テストが帰ってきてからちょっとテンションの低いやつなんて点数低くて親に怒られたからだろうよ。」
すずさんの質問にまるで当然のように回答するのは琢磨くんだ。ちなみにこのテスト期間中に琢磨くんとは自習の時に何度か一緒に勉強したのでとても仲良くなった。
「こら!琢磨。なんてことを言うのさ、みんながあんたみたいなやつじゃないの!鈴木くんはとってもお勉強ができるの。廊下に張り出してる順位表見なかったの?」
パシン!と丸めたノートで琢磨くんの頭を叩いたのは琢磨くんの幼馴染の南さんだ。南さんはすずさんとよく話しているが、さすがに席が僕の前っていうのもあるしで、僕も話をする。
「……マジ?」「まじ。」
どうやら、僕のテスト結果が校内順位50位以内にいたことは知らなかったみたいだ。
「……裏切り者じゃねぇかよ!あんなにギター上手いから勉強なんかしてないでずっと弾いてんのかと思ってたよ!」
「ま、まぁ。さすがにテスト期間中も引いてたけど普段から勉強は一応してたから。」
「な、なんて奴だ……。普段から勉強してるなんて……。」
「あんたも見習いなさい。」
「あ、そういえばテストの点がいいならなんで落ち込んでんだ?」
「それは、私が拓朗くんに教えてた古文の正答率が低かったからよ。で、私は国語系の科目を教えてもらう代わりに数学を教えてもらったんだけど、私の数学の点数はよくなってるから合わせる顔がないんだって。」
「そ、そうなんです。結構勉強したんですけど、ちょっと。」
すずさんは気にしなくていい。って言ってくれてるんだけど、気にしちゃうよぉ〜。好きな女の子に教えてもらったところの点数が悪いなんて悲しいよ〜。
「ま〜、わざわざ教えてもらったとこ間違えたんなら恥ずいわな。それも女の子に教えてもらったわけだから格好も付かないわけだ。」
鋭いのか鈍感なのかよくわからない琢磨くんにまさか気づかれてしまうなんて思いもしなかった。
「琢磨くんのいう通りだよ。」
「それなら、今度の期末テストで良い点取ってよ。」
「それはもちろん!でも、なんか他にもすずさんに恩を返したいよ。」
確かにすずさんは気にしていないだろうが僕は何か恩を返したいのだ!
「じゃー、また拓朗くんのギターの演奏が聴きたいいな。『クライス』のコピバンしてるんでしょ?そのバンドの出てるライブが見たいな!」
!!!!まずいことになった。一瞬びくって震えたのは見えただろうか。頼む気づかないでいてくれ。
「マジか!拓朗って『クライス』の曲やってんだな。俺、あんま音楽とか詳しくないけど、結構聞いてるぜ。」
「私も!鈴木くん、ギターこの前のめっちゃ上手かったから、見に行きたいかも。」
実際はコピバンなんかではなく、マジモンの集団なんだがこれ、どうしよう……。すずさんの願いは聞き届けたいが、ライブハウスでやるとバレる可能性が高くなるし……。うんうん、唸っていると。
「ご、ごめんね。流石に急だよね。無理なら無理で良いんだ。」
すずさんは残念そうな表情をした。非常に心苦しい。僕はこんな鈴さんが見たいわけではないのに……。
今日、バンドメンバーに連絡をして最悪一人でライブしよ。
「いや、僕たちのバンドはあんまりライブとかしてなかったらどうしようと思って。今日他のメンバーに聞いてみていけそうなら招待するよ。」
「本当!やったー!嬉しい。」
すずさんは満面の笑みを浮かべた。




