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35話 自覚

「おい、その手を離せよ。嫌がってるだろ。周りもこんな嫌がってる女の子放置して何やってんだ。」

昨日は早く駅前に来過ぎたせいですずさんを焦らせる結果になってしまったから今日は少し遅めに家を出たのが裏目に出てしまったのだろう。どこかでみたことのある男が嫌がっているすずさんの肩を掴んでいた。

「なんだお前は……ってなんだ鈴木拓朗じゃあないか。また俺と鈴の間を引き裂こうってか?お前もよくやるよな。」

「なんのことだ。僕は今日すずさんとの約束があったから駅で合流しただけだ。」

「そうです!近衛先輩との約束なんてしてませんし、私とあなたにはなんの関係もないです!」

やはりこの男は僕と決闘をした近衛湊先輩だった。でもなぜだ?近衛先輩は血統に敗北したことですずさんに近づくことを禁じられていたはずだが……。考えてもわからない。こう言う時は聞いてみるしかないだろう。

「先輩は僕とに決闘に負けた時提示された条件で何か特別な理由がない限りはすずさんとの接触を禁じられていたはずですが……何故今すずさんの肩を掴んでいたんですか?」

「あぁ?そんな当たり前な話聞くなよ。お前がさっき自分で答えを言ってたじゃねぇか。すずから俺を誘ったのに俺が無視してどっか行くのは違うだろ。それに今回の決闘は俺とお前との間に決められたものだ。俺が勝てばお前はすずに話しかけられなかったし、お前が勝てば俺はすずに話しかけられない。だが、すずは両方に話しかけることができるんだ。だから俺がすずと話していようと、何してようがこの前の決闘は関係ないんだよ。」

確かに先輩の言っていることは正しい。本来迷惑そうにしていたすずさんのことを考えての決闘だったのだ。そのすずさんが近衛先輩と会話がしたいだとか、近衛先輩がすずさんに話しかけてはならないことをすずさん本人が否定すればあの決闘はなかったことになる。しかし、先程すずさんは先輩と約束なんてしてないし、言い方からして先輩のことを拒絶しているようにも見えた。何か先輩とすずさんの中で食い違いがあったのかもしれない。

「先輩、改めてハッキリと言います。私は先輩のことが苦手ですし、今日は鈴木拓朗くんとお約束があったので駅に来たのです。先輩に会いに来たわけではありません。それに先輩が先程おっしゃっていた決闘に関することは事実ですが、これは私が先に話しかけたんじゃなくて、先輩が声をかけてきたんです。それに私は先輩声をかけて来なかったら先輩が駅にいたなんて全然予想もしていなかったですし、気づいてもいなかったです。」

どうやら全部先輩の勘違いだったようだ。

「すず、大丈夫だ、安心してくれ。それもこれも全部鈴木に命令されてるんだろ。俺が絶対に助けるからな。」

すずさんは先輩の言葉を聞いて、震えていた。どうやら僕が来る前にも先輩がよくわからない解釈ですずさんの言葉を歪めて受け取っていたらしい。

「先輩がどう思っていようとすずさんは先輩のことを自ら会話しに行ってないと言っているのでこのことは、決闘委員会に報告させていただきます。」

「ふんっ。お前がなんて言おうが俺が先に話しかけたことは証明できないだろ。」

「いいえ、今までの僕がすずさんと合流してからの音声は全て録音させてもらっています。これを決闘委員会に提出するつもりです。これで僕たちの会話のどちらに正当性があるのかがハッキリとします。少なくとも先輩はすずさん本人から主張を否定されているので委員会から何かお達しが来るかもしれませんね。」

「き、貴様!そうやってすずを脅してどうするつもりなんだ!まぁ、いい。お前がなんて言おうと、俺が鈴木拓朗が田中すずを脅している証拠を見つけてやる。だから、すず安心してくれ。」

「言いたいことはそれだけですか?もう僕たちは行きますよ。行こう、すずさん。」

僕はすずさんの手を引いて近衛先輩を置いて駅の改札の方向に向かって行った。

「た、拓朗くん。さっきはありがとう。でもどうして駅の方に来たの?もう先輩のことは終わったんだし、早くうちに行って勉強しよ?」

「いいや、さっきのは全部すずさんが正直に先輩に自分の気持ちを伝えたからこそ、ああ言う手段が取れたんだ。だから僕は本当に何もしてないんだ。すずさんの勇気の勝利だよ。」

「ううん、私一人だったら、きっと解決できなくて先輩の言いなりになってたよ。先輩に肩を掴まれた時はもう拓朗くんとの約束守れなくてごめんなんて思ってたし。だから、私を助けてくれてありがとう。」

すずさんはさっきまで苦手な先輩から言い寄られて周りの人も助けにこない状態だったのにこうも笑顔を僕に向けてくれる。本当はまで怖いのに……。この子だけは絶対にもう他の誰にも傷つけさせない。絶対にだ。

僕は先程まであった事実を胸に刻んで、すずさんを守っていこうと決意をした。それに、さっきのすずさんの笑顔は本当にまずい、愛おしい気持ちになってくる。そんなすずさんの笑顔を独り占めにしたいと考えている僕はもう、結構前から気付いてないだけで、すずさんにベタ惚れだったのかも知れないな。



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