27話 変化
「そういえば、おにぃって田中さんのことが好きなの?恋愛的な意味で。」
琳が顔を変な感じにしながら聞いてきた。
「う〜ん、考えたことなかったな。何でそう思ったの?」
今まで田中さんのことを僕はずっと自分に友人を作るきっかけをくれた人っていう印象だった。う〜ん、本当にわかんないな。
「えぇ〜、だっておにぃ決闘騒ぎの後から、やけに田中さんの事話す時めっちゃ笑顔っていうか楽しそうに話してたし、そうかな〜って思って。」
「でも普通だと思うけどな。」
「な〜んだ。面白くないの〜。ま、でもおにぃには私がいるしね。」
「そうだね。」
「もぅ!揶揄ったのにそんな普通に返さないで。」
琳としばらく会話をして僕は自分お部屋に戻った。自分の部屋に戻ってから考えるのは専ら田中さんのことである。やはり自分が今一番仲のいい女の子は田中さんである。それに僕のことを今まで鈴木くんって言っていたのを、拓朗くんって呼んでくれたのはかなり嬉しかった。僕も田中さんのことをしたの名前のすずで呼ぼうと思った。だけど、何だか照れ臭くて呼ぶ事ができなかったのだ。以前、田中さんと旭とでファミレスに行った時に知り合った天野空さんのことは最初、苗字が分からなかったから名前で呼んだが、その時は照れ臭くも何ともなかった。もしかしてこの照れ臭さというものが僕が田中さんの対してのみの感情ならばきっと恋をしているのだろう。自分の気持ちがわからないな。色々考えたがやはりわからなかった。きっとこれは友達以上恋人未満のような感情なのだろう。
そんなことを考えながら、僕は眠りについた。
◇◇◇
「おはよ〜。」
「あはよう、拓朗くん。」
「あ、おはようございます。鈴木さん。」
「おはよ〜、鈴木さん。」
結局昨日の琳からの問いかけについての答えは出なかった。だがこうやって朝挨拶をしたら周りの席の人や、前回のライブを見てくれた人たちが挨拶を返してくれるので、田中さんには感謝をしている。
「田中さん、おはよう。新井さんと近藤くんもおはよう。」
「おう、テストの勉強はどうだ?ちなみに俺はダメそうだ。」
「何でそんな気軽そうに言ってるんだ。非常にまずいだろ。初めてのテストで赤点とか取るとまずいんじゃない?追試験とかもあるんだろ。」
「だが、俺は問題ない。部活で全力を尽くさせてもらう。」
「留年すると部活辞めさせられるけどな。」
「……」
今僕と愉快な会話を繰り広げているのは近藤琢磨くんだ。いつも朝学校に来ると挨拶ついでに少し話している。前までは田中さんとしか話をしていなかったので新鮮な感覚で嬉しいにだが、田中さんと会話する機会も少なくなっているので少し残念な気分もある。そんな田中さんも別に黙っているわけでもなく、近くの席の新井南さんとの会話を楽しんでいる。少し変化学校生活を感じながら、授業の準備をした。
放課後、特に何か用事もないため基本的に僕は寄り道もせずに家に帰っている。
「拓朗くん、今日も一緒に帰ろうか。」
「うん、田中さんが問題ないなら一緒に帰ろうか。」
最近はよく田中さんと一緒に帰っている。やっぱり絶妙に最寄駅が近いため、長い間一緒に会話ができるのがいい。
「やっぱりこに時期の話題って、テスト関係だよね〜。」
「うん、そうだよね〜。でもこの前の伊藤くんのお家で拓朗くんと勉強会したおかげで集中して勉強出来たから成績良くなったかも。」
「それならよかったよ。」
その後も授業の感想、最近聞いたバンドの曲、テスト開けたら何したいだとかそういう話をしていた。駅に近づいてきた段階で、僕は昨日の夜に考えていた時に思ったことを行おうとした。
「あの、田中さん。その、僕たち結構仲良くなったので、そ、その、すずさんと呼んでもいいですか?」
「え……」




