25話 協力者
「あれ?旭じゃん。それとすず?」
僕たちがファミレスで今回の決闘の打ち上げをしているときにある声が聞こえた。
「空じゃん。こんなとこで会うなんて奇遇だな。ん?田中さんのこと知ってんのか?」
「前に電話した時に言ったじゃん。昔の知り合いが最近引っ越してきたって。その昔の知り合いがすずだよ。」
「はぇ〜、意外と世間ってのは狭いもんだな。」
「そんなことより!旭でもすずでもどっちで良いけど、彼のことちゃんと紹介してよ。」
旭と田中さんの共通の知り合いらしい空さん。この3人の会話を聞いていたら、いつの間にか僕の話題になっていた。
「彼はね〜、拓郎くんって言うんだよ。鈴木拓朗くん。」
「あぁー!!この前すずが電話でお礼がしたいだとか、同じバンドを知ってたから仲良くなりたいって言ってた子?仲良くなれてんじゃん。」
田中さんが電話で結構僕のことを空さんに言ってたみたいだ。なんか少し照れくさい気持ちだ。
「あれれ〜、拓郎くん。お顔が真っ赤だよ〜??すずに色々言われて照れくさかったのかな?」
「おい、空。あまり拓朗をいじってやるな。こいつはあんまり女子と会話してこなかったから苦手なんだわ。」
「お、おい、旭。あんまり僕の恥を語るな。」
初めて会った女の子に自分の今までの悲しい、恥ずかしいことを言われてしまって顔がもっと赤くなってるだろう。
「あー、えっと。空さんでいいのかな。どうも初めまして。旭と田中さんの友人の鈴木拓朗です。よろしくおながいします。」
「うん。あたしは天野空。すずとは昔友人で一時期は引っ越しで離れてたんだけど高校でまた家が近くなったね。所謂幼馴染ってやつ?あと旭とはなんて言うんだろうか。中学の時に同じ学校だったんだけど、あたしが書いたイラストのことで仲良くなった感んじかな。それでも、高校が離れても何やかんや連絡を取り合う感じの仲だよ。よろしくね。」
「これは丁寧な挨拶をありがとう。旭とは天野さんと同じで中学の時に知り合って仲良くなったんだ。田中さんとは高校に入ってからいろいろ助けて貰ったんだ。それから、音楽の趣味が一致してすごく話し始めたかな。そのおかげで、僕にも友人が増えてとても感謝しているんだ。」
「へぇ〜。すずがそんなことをねぇ〜。」
お互いにそれぞれ2人との仲良くなったきっかけを話した。どうやら天野さんは田中さんがあ僕の友人作りに貢献していたことを揶揄っているようだ。
この後も僕たちは日常的な会話をして、解散した。
◇◇◇
私、田中すずは拓郎くんたちと解散した後は特に寄り道もせずに空と一緒に帰宅していた。
「ねぇ、すず。私、気づいてしまったんだよ。もしかして、田中すずは鈴木拓朗くんのことが好きなんだね?」
ビクッと体を震わせてしまった。まさかたった1時間30分程しか話していないのになんで私の気持ちがバレてんだ?
「どうやら、図星だったようだね。でもなんかすずがああいうタイプの子が好きになるとは思わなかったよ。ま、でも何かあれば相談しなさい。旭も協力してくれるはずよ。」
「もー!拓郎くんは凄いんだよ!学校でなんか一番ギターがうまい人と決闘して勝っちゃったんだよ〜。」
「やっぱり音楽が合うかどうかが重要だったみたいね。そういえばすずって『クライス』のタクのガチ恋じゃなかったの?」
「それもちゃんと考えたよ。最初はなんか自分の気持ちがこんなに簡単に移り変わっていくものだと思っちゃって、がっかりしたよ。でも拓郎くんの演奏はどこか、タク様を彷彿とさせるものだった。だから悩みに悩んで私はタク様のことを愛していたんじゃなくて、ただ尊敬していただけだということに気づいたのよ。」
「それならあたしと旭の力で、すずと拓郎くんをくっつけよう作戦を実行します。」
「空が手伝ってくれるのは嬉しいけど、あんまり伊藤くんのことを無闇に巻き込んじゃダメだよ。」
「問題ないよ!旭なら手伝ってくれる!それじゃ、SNSで3人のグループ作っておくね。じゃ〜ね〜。」
そう言い残すと、空は玄関のドアを開けた。どうやら空と恋バナていたら家の付近までついていたようだ。話すのに夢中で全然気づかなかった。それにしても、今日拓郎くんは何度か空のことを『空』って名前で呼んでいた。私は一度も名前で呼んでもらった事がないのに……
ちょっと妬けちゃうな……




