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22話 自分の気持ち

「今回の決闘の勝者は……1年!鈴木拓朗です!」

司会者の決闘の勝者の発表を聞いて、私、田中すずはとてつもなく安堵した。


やっぱりなんと言おうと、よくわからない先輩と一緒にお昼ご飯を食べるのなんて嫌だった。でも、鈴木くん達のおかげで私は救われた。

「伊藤くん、ありがとう。」

近くにいた、今回の決闘の提案者に私は感謝を伝えた。

「いや、そんなことは気にしなくていいぞ。田中さんのために今回の決闘をしたのはあるけど、拓朗のギターの技術を周りに認めさせたら、あいつにも友人ができると思って決闘を申し込んだっていうのもある。ま、その結果田中さんが恋に落ちるとは思わなかったが。」

なんで感謝を伝えたのに私は揶揄われているのだろうか。不思議なことである。

「伊藤くんにもいろんな思惑があって行った決闘っていうことは分かったけど感謝してるよ。だからさっき揶揄ったのは

見逃してあげる。」

「なんだ?俺のおかげで、難を逃れたのに随分ないいようだな。」

「なんでいきなりそんな高圧的になってんの?」

「なんとなく。」

伊藤くんとなんともない話をしながら私は鈴木くんに対するインタビューを聞いていた。

「今回の決闘ではある女子を賭けた決闘だったようですが、ズバリ!鈴木くんは、その女の子のことが好きなんですか?」

「そうですね〜。好きか嫌いかと問われれば好きですね。特に、僕は学校始まって1週間ほど学校に来れなくて、友達ができていない時に話しかけて貰えたのがとても嬉しかったです。なので好きですね。」

「ほほ〜う。つまり恋愛的な意味意味ではなく、友人として好きということですか?」

「そういうことになりますね。」

「なるほど〜。ありがとうございます。」

鈴木くんの話を聞いて、私はなんだか気が遠くなるような感じがした。もしや、本当に鈴木くんは私のことを親切な友人としか見ていないのだろうか。それはとても悲しいな。どうすればいいんだ。これからもっとアタックをかけていった方がいいのだろうか。まずいぞ。もう、揶揄うのやめてよ〜、なんて腑抜けたこと言ってる場合じゃない。もう私は鈴木くんに惚れた。これが事実だ。だからこそ、今回のライブで鈴木くんに惚れた周りの女子よりも話しているから有利だと思っていた。しかし、鈴木くんが私のことを友人としか思っていないのならば、最悪好きな人ができたときに相談しかねられない。これはもう、攻めるしかないな。

「ね〜、田中さん。さっきから百面相してるけど大丈夫?卓郎に意識されてないからって深く考えすぎじゃない?」

「意識されてないどころか、ただの友人扱いで、最悪他の女に惚れた時に相談してくるかもって考えたら相当まずいことに伊藤くんは気づいてる?」

「えっ……もうそんな深く考えてんの……てっきり、揶揄わないでよとか言われると思ってたのに。」

「さっきまでは本当に自分が鈴木くんのことが好きなのかが分からなかったのよ。だからここだけの話にしておいて欲しいんだけど、私本当は『クライス』のギターボーカルのタク様にガチ恋をしていたのよ。でもそれはただギターの技術とか、歌が好きっていうのでただ音楽性?っていうのが似てたから好きになったのよ。でも、鈴木くんはギターの腕前とかは、タク様ほどまでとはいかないにしても上手だし、好きな音楽も似てる。共通点が多いし、普段から私のことを気にかけてくれている。だから、きっとこれが恋なんだって気づいたのよ。タク様の対する思いは多分周りの女の子が色恋に目覚めてるのに私は何も思わないことが怖くなって、隠蓑にしただけなのよ。タク様が好きなのは本当、でもそれは恋じゃないことに、今気づいた。」

私は今までタク様のことが好きだ、結婚したいなんて言っていたが、本当は自分とタク様が結婚できるなんて思っていなかったし、諦めていた。自分じゃ彼を幸せにできないからなんて言い訳もしていた。でも、さっき鈴木くんが好きな人を自分に相談してきたことを考えると、胸が張り裂けそうな気持ちになった。だから気づくことが出来た。私は、鈴木拓朗のことが好きだということを、そしてタク様は私の憧れのような存在だったということを。

「お……おう。なんか俺が揶揄っただけなのにめちゃくちゃ悩ませてしまってすまないな。」

「ううん、気にしないで。伊藤くんのおかげで自分の気持ちの整理ができたし、何よりちゃんと鈴木くんのことが好きだと自覚できてよかった。」

「そうか、まぁ、なんだ。これから大変だと思うが頑張ってくれ。田中さんなら拓朗を射止めることもできると思うし、俺も積極的に手伝おう。何かあれば言ってくれ。」

「ありがとう。でも、今回の決闘はお互い関係者だから二人で見たけどさ、プライベートというか学校で何もないのに二人でいるとかって伊藤くんんお彼女に申しわけがないんだけど大丈夫なの?」

伊藤くんが手伝ってくれるととても助かるが、彼のはちゃんと彼女という存在がいるのだ。これは忘れてはならない。いくら私が伊藤くんとやましいことになってないと説明しても、相手の彼女さんが納得してくれるとは限らないからな。ここはちゃんとしっかり確認を取らなければならない。

「あぁ、それに関しては多分問題ないと思うが、今日帰宅したら確認とってみるよ。どうやら、今回の決闘も終わりそうだし、俺は帰るよ。田中さんは校門前で拓郎が帰るのでも待ったら?それじゃあな。」

「うん、私も待とうかと考えていたの。じゃあね。」

私が鈴木くんのことを意識していた合間にどうやら司会者は解散の合図を既に出し終わっておりみんな帰宅の準備をしていた。私は今日は特に用事もないわけだし、多分鈴木くんのことだろうから、周りの人たちに挨拶でもしているのだろうから、一足先に校門まで行って待っていよう。そう考えて私は体育館を出た。


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