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20話 決闘の勝者は誰に

「はぁ……はぁ……」

自分の演奏を終えて、僕は舞台裏へといく。やはりライブの後はとても疲れる。息を切らしながら、近くに設置してある椅子に座った。ライブを行う日はだいたい朝から少し緊張をしていて本番前に緊張度が爆発する。そのお陰でもう今日は何か激しいいことができない。ちなみに近衛先輩は僕の反対側で椅子に座っている。

「それでは今から、観客の皆様に投票を行ってもらいます。舞台前にホワイトボードを設置しています。投票シールを配布しますので、近衛湊の演奏がいいと思った人は赤色のシールをホワイトボードの左側に貼ってください。また、鈴木拓朗の演奏がいいと言う人は青色のシールをホワイトボードの右側に貼ってください。」

そろそろ結果発表される時間だ。それにしても、今回の投票システムはなかなか珍しいのではないだろうか。普段の投票。例えば生徒会選挙を行う時は、演説を聞いたあと、教室に戻り紙に書いて投票する形であった。

しかし今回は投票した紙を開封して無効票などに仕分けをして結果を発表を行うのでは時間がかかりすぎている。それゆえに、みんなに見えるような形で時間内に投票に行いその場で集計を行う。そして発表だ。もちろん集計をするときにホワイトボードは隠し、実行に関わっている人たちで行う。まぁそれでもかなり圧倒的な差だったら一眼だわかってしまうが……。それに配慮してなのか、周りの人に宣伝をさせないためか、両方が理由なのか、僕と先輩は舞台裏待機なのだ。ちなみに待機している間は今回の演奏に直接的な関わりがなかった人との連絡は禁じられている。今はまだ投票をしている時間なのだろう。だから、ホワイトボードは舞台裏から見えないし、集計するときも僕と先輩には見えないようにするみたいだ。

もうすでに僕はやることを済ませている。ライブも全力を出した。なんなら強化週間でギターのテクニックを集中して練習しただけ今回のライブはギターの出来は最高であった。もしこれで先輩に負けたらもう仕方がないだろう。いや、そんなことは無い。一生後悔するし、なにもやる気がなくなるだろう。旭は大切なベース、田中さんはこれからの自由、僕はこれからの人生がかかっているように思えてきた。なんだか緊張感が復活してきたようだ。

「それでは、投票の受付を終了します。これからの投票はいかなる理由があろうとも受付致しせん。これで一応解散ということになりますが、この後集計をして発表を行うので、結果が気になる人は残っておいてください。また、この結果は明日の朝、校門が開く時間に掲示板上に掲示します。それでは、発表までしばしお待ちください。」

もう、誰にも何もできない。僕はただただ時間が過ぎるのを椅子に座りながら、待つのであった。

◇◇◇

私、田中すずは鈴木拓朗の演奏を聴いていた。この音楽は非常にまずい。こんなの惚れてしまう。私の好きなものが詰まっているのだ。周りにはミーハーだと思われたくなく『クライス』よりも『ラウンズ』の方が好きだと公言している。しかし本当は、『クライス』が大好きなのである。特にそのバンドのギターボーカル、タク様のことが大好きなのだ。ガチ恋といってもいいだろう。だから、なぜ自分が鈴木くんに君にときめいているのかがわからない。伊藤くんから鈴木くんがこの演奏している曲は自分で『クライス』の曲をギターアレンジしたと聴いたからなのか。それとも、普段と今、舞台の上でライブをしている姿の差が激しいからなのか。多分今私の頬は今相当赤いのだろう。なんだろう、今自分と鈴木くん二人っきり、世界に二人っきりしかいないような錯覚に陥るほど引き込まれている。そして、気づいたら演奏は終わっていた。

「うわぁ〜、あいつ今の相当のってんな。これじゃ決闘終わったあと結果に関わらず、すんげー人気者だな。」

隣から、伊藤くんの独り言が聞こえた。

「あれ?今の鈴木くんって相当ノってたの?」

「あぁ、普段もこんな感じのライブしてるけど、やっぱり自分でもギターの技術が向上したのを感じたんだろう。かなり出来上がってるよ。っていうか、なんか田中さんなんか頬赤いけど大丈夫?」

「えっ……う、うん。大丈夫だ。問題ない。」

「そうか。なんか今のタクは普段と全然違うからギャップ萌え?みたいなやつで惚れたのかと思ったよ。」

「そ、そんな訳……な、ないじゃない……」

まさか、今自分が考えていたことを伊藤くんに当てられるとは思わなかった。それにしても、ギターを弾いている鈴木くんんはどこか『クライス』のタク様に見えた。このまま歌もどうですか?って勧めたくなるな。でもこんな近くにタク様がいるはずがない。っていうか鈴木くんっていつも私のことに寄り添ってるっていうか、ただ音楽の趣味があったから話しかけただけなのに気づいたら音楽に全く関係のない話もしていた。それになんだか最近は、自分と鈴木くんとの間に共通点を見つけると嬉しくなる。な、なんだ、もしかして、結構前から私は鈴木くんに惚れていたのか?自分お気持ちがわからなくなり混乱していた。

「そうなのか。まぁ、冗談で言ったんだがそん反応が返ってくるとはな。」

伊藤くんはニヤニヤしながらこっちを見てくる。

「もう、揶揄わないでください。今回の曲がとても好みの曲だったからちょっと興奮してしまっただけですよ。」

「そうか、なんだかさっきよりも頬が赤くなってんぜ。この後の打ち上げ俺用事が出来ちゃったかも。」

「本当に揶揄わないでください。それに今回の打ち上げ、あなたも当事者の一人なんですから来てくださいよ。というか来ないと二人っきりになっちゃうじゃないですか。」

「なんだ、タクと二人っきりは嫌か?可哀想だな。」

「そんなことないです!こんなに女の子を揶揄って!あなた彼女とか絶対にできないですよ。」

「あぁ、それなら問題ない。もう彼女いらからな。」

「え"っ……本当ですか?なんか随分物好きな彼女さんなんですね。」

「随分と失礼なやつだな。そんなことより、本当にタクに惚れたなら早めに行動しておいた方がいいぞ。今回のでタクにちょっかいかけるやつが大量に出てきた。田中さんは今の所一歩リードしているが、どうなるかわからん。俺的に誰よりも先に話しかけた田中さんと付き合って欲しいがな。」

伊藤くんは至極真面目な顔で私にいってきた。確かに、周りを見渡しても今まで鈴木くんを虐げていた人たちも今度話しかけよう、と言っていたりしている。なんか表面しか鈴木くんのことを見ていないのに随分ないいようで怒りが湧いてくる。

「ま、別に惚れてはいないですけど、アドバイスとして受け取っておいてあげますよ。」

少しばかり上から目線で返答を返した。私はタク様のことが好きなので、鈴木くんとは別にそういうのではなく……

と脳内で一人言い訳をしているとあることに気がついた。まさかね?


「そういえば、伊藤くんって鈴木くんのことタクって呼んでるんですね。」


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