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19話 僕のターン

「「「うぉおおお!!!」」」

先輩の演奏が終わり僕の番になった。いつもこのステージに立つ瞬間は心臓が鳴り止まない。何回ライブをしても慣れないものだ。でも、この気持ちを持ってライブを行うからこそ、いいものになる。それでは行こう。舞台に上に……

◇◇◇

「近衛先輩の演奏すごくよかったね〜。」

「そうだな。あれはいいものだったね。でもこの演奏の後やる子が可哀想に感じるよ。」

「でも仕方ないんじゃない?実際に勝負を挑んだのはあっち側らしいしね。」

「それでもこの後に聞くのはしんどいな。」

「確かにね。」

周りの声を聞きながら私、田中すずは少し悔しい気持ちになった。

「何回も言うが、先輩は本当に上手いからな。周りから求められてない状態でのライブもいい経験になるだろうな。」

「伊藤くんはなんか余裕そうだね。私はなんか周りが鈴木くんのこと好き勝手言って悔しい気持ちがするよ。」

「それは仕方ないさ。あいつ見た目に頓着しないせいで、誤解されやすいしな。それに一週間休んでるのもプラスして同じクラスには話す人とか、田中さんくらいしか違なさそうだしな。」

「確かにねー。」

「それに演奏を聞けばわかるから。おっ出てきた。問題なさそうだな。」

伊藤くんと話をしていると鈴木くんは出てきた。その後先輩と同様に準備をしているのだが、早い。あっという間に準備が完了した。

「タクは機材の準備が早いのがいいところだ。」

機材お準備が早いのはいいことなのだろう。スタジオの入るときは五分前にスタジオから退出するのがマナーと聞いたことがある。ならば、準備や片付けが早いのはいいことなのだろう。

「もうすぐ始まるね。なんか不安だったけどもう楽しみになってきたよ。」

「そら、いいことだ。今までにないような音を聴かせてくるからな。」

そうして、鈴木くんのステージが始まった。

◇◇◇

準備が終わった。あとはギター一品で弾けるようにした、『クライス』の曲のメドレーを弾くだけだ。あっ、田中さんが手を振ってくれている。よし……気合は入った。行こう!

「初めまして!鈴木拓朗です!今回は『クライス』の曲を弾いていこうと思います!よろしくお願いします!」

初めの挨拶をする。しかし、さっきまで演奏していた先輩の良いんだろうか、なんて言うべきかはわからないが、あまり盛り上がっていはない。いつもの『クライス』のライブでは、お客さんは僕たちの演奏を求めてやってきている。だが、今日のライブでは、誰も僕を求めてはいない。さらに、先輩の演奏の余韻を楽しみたい人たちもいるだろう。でもそんなのは関係ない。なぜなら、どんな状況でもお客さんに楽しんでもらえるようにならなければならない。これもなかなか体験できない状況だ。全力でぶちかましてく。


チューニングを完了してあるギターをかき鳴らしていく。最初から激しくジャカジャカと鳴らす。お客さんはまだ僕の音についていけてないだろう。

僕の見た目は正直地味だ。さらに髪も長く清潔感がないように思われがちである。それがギターをしっかり弾けていることにお客さんはかなり驚いているのだろう。サビの直前、このためだけに持ってきたエフェクターをオンにする。その途端曲は雰囲気を変える。音は尖り、激しさを増していく、そのまま突き抜け、エフェクターを消し、曲調を変える。静かになり、音もどんどん小さくなっていく。そしてとうとう1弦だけを使う。音が消えかかり、少しハウリングさせる。

すかさず、エフェクターをオンにしてさっきまでの静かさよりも、サビの激しさよりも増していき、僕自身も大きく動く。いつもの『クライス』でのライブのように。そしてそのままのスピードで僕の演奏は終わった。




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