10話 巻き込み
「先輩も俺も軽音部でしょ?正直このままだと永遠にここで話さなくちゃいけなくなるんでギター対決で白黒ハッキリさせんのはどうです?」
この地域には変な噂が流れている。例えば、席替えのたびに抜き打ちテストを行う学校があるのだ。
そしてもう一つ噂がある。それは、ある学校の部活には決闘システムが存在すると言うことだ。
決闘システムとは簡単なことで、お互いの納得できる条件の元、勝負を行う事である。
「おいおいそりゃ、決闘システムを行うってことか?」
どうやら僕の予想した通り決闘システムの噂は事実で、この学校のだったみたいだ。
「そうですよ。俺と先輩でギター対決をします。内容は放課後体育館でお互いにギターソロを行い、観客に判定をしてもらう。これでどうですか?」
「まぁ、決闘システムなんて滅多に使われないからやってみたいが、お前より確実に俺の方がギター上手いぞ。お前もギター始めたばっかな割には上手いんだが、俺には勝てないけどそれでも良いのか?」
そうだ、旭は『クライス』で大活躍しているし、『クライス』結成前から音楽をやってるだけあって行ってきたライブ数も違う。それでも、旭の専門はエースなのだ。ギターを始めたのは高校に入ってからだ。良い感じに言うとギターを経験して理解を深得るため、悪く言えばベースの息抜きなのだ。この先輩がどれだけ上手いかは知らないが、これだけ自信があるのだ、旭より上手いのは事実だろう。こんな勝負を申し込んでいったいどう言うつもりなんだろうか。
「まぁ、俺よりも先輩の方が上手いのは事実ですよ。なのでハンデを二ついただけませんかねぇ?」
「何だよハンデって、そんなに差があるならもう俺の勝ちでいいじゃねぇか。」
「まぁまぁそう言わずにね?僕とのハンデありの勝負に勝てたら僕とそこにいる男、鈴木拓朗って言うんですけど、僕たち浸りは一生田中すずに関わらないって言うのはどうです?そしたらもうこんな言い争うしなくて済みますよ?」
「あぁ?そんなの別に俺が、すず連れていきゃ全て解決すんじゃねぇか。」
「じゃぁ、さらに前僕が前に洩らしてしまったあの機材、覚えてます?」
「あー、あれな。お、おめえまさかその機材賭けようってのか?」
何だ?旭たちの言ってる機材。なんのものだろうと考えると最悪な予想ができてしまった。
「そう、Fenderの1965年製のジャズベースですよ。それを譲りましょう。先輩はベース弾かないと思いますけど、資産にはなると思いますよ?」
どうやら僕の最悪な予想が当たってしまったみたいだ。
1960年に誕生したジャズベース。その5年後に発売されたって考えただけでも高価である。
その価値は160万を超えるだろう。しかも、そのベースは、旭が『クライス』のベースとして活動を通して祖父に認められ、贈られたものである。こんなところで出すべきものではない。しかも旭は当事者ではないのだ。
「旭、それはだめだよ。流石に悪すぎる。それにそのベースを賭けてまでするような勝負ではない。考え直すんだ。それに、お前は当事者じゃない。もしこれで朝日が負けた時俺は責任が取れない。」
「おいおい、何横から口挟んでんだよ。本人が良いって言ってんだからよぉ。良いだろ?なぁ、旭」
「拓朗、大丈夫だ。えぇ先輩、問題ないですよ。その代わりハンデ2つ頂きますよ。」
何でこんな旭は余裕そうなんだ。もしかして本当はあの先輩そんなに上手くないのか?
「おう!いいぜ!何なら俺が負けたら二度とすずちゃんに近ずかねぇよ。」
「じゃあ、ハンデの一つは対決は二週間後、一週間は決闘システムの事務処理にかかるはずなので、そこから1週間後です。この時間をもらえる事がハンデの一つです。」
「何だ。練習する時間でも欲しいのか?まぁ、良いだろう。この二週間俺はすずちゃんには近付かないようにしてやるよ。最後の二週間だ。別れを伝えておけよ。」
この一週間で僕がみっちりギターを教えれば勝てるか?などと考えてるとまた衝撃なことを言った。
「二つ目は勝負するのは僕の代わりに、そこの鈴木拓朗に演奏させてください。」




