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第17話 ライナの歩む道

 クリストフェルさんたちブルーストームは、大森林の奥地を目指して出発して行った。

 入口起点近くの休憩ポイントには、再びライナたちだけになる。


「なあ姉さん、今日はこれからどうする?」

「いったんギルドに戻ろう。リンクスの件を報告しないと」

「それがいいわ。それで他の冒険者にも警告を出して貰わないとよね」


「そうだな、まだ昼だけど仕方ないか。それじゃ昼飯食べようぜ」

「もうエヴェは。でも折角買って来たし、そうよね」

「うん、お昼を食べちゃおうか」


 レティシアとエヴェリーナ、セラフィーナがそう相談し、ここで朝買って来た昼食を食べてから冒険者ギルドに引揚げることになった。

 ライナはサンドイッチを頬張りながら、この大森林に入ってからのことを思い返す。


 いちばん不思議だったのは、あのリンクスが近づいて来たとき、まだ姿が見えなかったのにわたしの身体が動かなくなって、声も出せなくなったことだわ。

 恐ろしかったから? ううん、確かに何がいるのか分からなくて怖かったけど、それだけのせいじゃなかった。


 あのときも思ったけど、とっても大きな猫、じゃなかったリンクスよね、あのリンクスが何かをわたしに向けて放っていたのよね。

 魔法じゃないと思うけど、キ素力の何かを。

 咄嗟にわたしも自分の身体にキ素力を循環させたら、動けるようになった。

 そうやって対抗するのが普通なのかしら。


 まだライナ自身が良く分かっていないが、それはライナのキ素力がとても強く、かつ循環させられる量が膨大だからだった。

 それはライナの生まれ持った資質と、8歳から自分だけで土魔法の練習を続けて来た賜物なのだ。


 あと、あの地面から出した杭は、ちょっと失敗だったわよね。

 セラ姉さんが矢を射って当ててくれたから少し掠めることが出来たけど、あのリンクスは動きがとても早いっていうから、たぶん逃げられるか跳び掛かられて何の役にも立たなかった気がする。

 跳び掛かられてたらわたしは大怪我をしたか、もしかしたら死んでたかも。

 もっと魔法を研究して訓練しないと。思いつきだけで闘うなんて無茶よね。



「どうしたの、ライナ。静かだけど、まだ怖いのが残ってる?」

「ううん、怖かったのは身体が動かなくなったときだけ。いろいろと思い起こして、反省してたの」


「あとから腰を抜かしてたぞ」

「あれは、姉さんたちが倒し終わって、それで安心して身体から力が抜けちゃったの。怖かったからじゃないよー、エヴェ姉さん」

「そうかそうか、そう聞いとくな」


「離れて見てたけど、ライナちゃんは凄く冷静にしてたわよ。土魔法で足を固めたのなんて、初めての獣との戦闘でとても出来るものじゃないと思うわ」

「ああそうだね、セラ。あんな大きなリンクスの四つ足を、同時に固めたんだから。あれには驚いたよ」


「でもレティ姉さん、あのときはあいつがちょっとでも動き出したら、失敗しそうだったの。それに、どのぐらいの足の力があるかわからなかったから、固める加減も想像して適当に決めただけ。たまたま成功したから良かったけど」


「そうか、足を動かせば固めるのを外されるし、固めても土ごと足が動かせたら意味がないか。ライナは、いろいろと考えてるんだな」

「本能で動くエヴェとは違うのよ、ライナちゃんは」


 でも、あんな獣相手とかと闘っているときは、のんびり考えてもいられないんだわ。

 考えと判断とイメージを描くのと、キ素力循環と魔法発動とが瞬時に出来ないと。特にあんな接近した戦闘では、生半可の土魔法では役に立たないとライナはあらためて思うのだった。


 火魔法が使えて、火の球とかを何も考えずにぶっ放すだけだったら簡単なのに。

 でも森の中での火魔法は厳禁よね。

 それに、わたしにある魔法は土魔法だけ。それを闘いでどう使えるように出来るか、もっともっと考えて練習しないと。




 大森林を出た4人は、グリフィニアの南門へと向かう。

 歩行者用の出入り口から都市城壁の中へ入ろうとすると、出る時にもいた警備兵が声を掛けて来た。


「おや、もう戻りかい。随分と早かったな。まあ無事に戻って来たから、良かったがな」

「ちょっとね。ギルドに戻る用も出来たし」


 レティシアが言葉を濁してそう答えた。

 大森林の浅い場所で大型のリンクスが出て倒して来たなどと、人が大勢通るこの門で迂闊に話すことは出来ないと思ったからだ。

 すべてはギルドに報告して、判断を委ねる必要があるだろう。


「えーと、ライナちゃんだったっけ? 大森林はどうだった、大丈夫だったかい?」

「はい、とても魅力的な森でした」

「ほぉー、魅力的な森か。そうかそうか、これからも頑張って働いてくれよ」

「はい」



 そうして4人の女性冒険者は、冒険者ギルドへと戻った。

 ギルドのホール内には、今日も多くの冒険者たちがたむろしていて、仕事に出るでもなく話をしたり掲示板を眺めたりしている。

 それを横目で見ながら、ライナたちはカウンターの方へと急ぐ。


「おーい、エヴェたちじゃねえか」


「ニックだ。見つかっちまったぜ。面倒くせえな」

「あいつ、うるさいからね。無視して行きましょ」

「おいおい、逃げんなよ」


「ちょっと急いでるんだけどね、何か用?」

「あ、レティさん、すみません。いやなにね、レティさんたちが臨時パーティを組んで、ライナを、あ、いや、ライナさんを大森林に連れて行ったって聞いたもので、首尾はどうだったかって気になりまして」


「わたしのことはライナでいいよ、ニックさん」

「お、おう。元気そうで何よりだ。大森林はどうだった」

「とっても楽しかったよ。と言うか、いろいろ驚いたけど。命起草をたくさん採取してきた」



「ほらニック、レティ姐さんが急いでるって言ってるじゃない。邪魔するとあんた、また怒られるよ」

「そうだけどよ。ライナの初仕事で、いきなり特例で大森林って、そりゃ気になるじゃねえか」


 猫人のマリカが近づいて来てニックを引っ張って行こうとし、ふとエヴェリーナが背負っている毛皮に気づいた。


「エヴェ、あんたが背負ってるのって……」

「お、これか、これはな」

「エヴェ」


「あ、何か訳ありね」

「そうなのよマリカ。まずはギルドに報告してから」

「わかったよ、セラ。レティ姐さんもお邪魔してすみません。じゃね、ライナちゃん。ほら行くよニック」


 そうしてマリカは、何かを言おうとしたニックを黙らせて引っ張って行った。

 どうやらニックは、マリカにはまったく頭が上がらないようだ。


「マリカさんて、目敏いんですね」

「あの人、わたしと同じ斥候職でね。それに獣人族だから、斥候としては凄く優秀なのよね。だから、こういうのには目敏いのよ」

「ああ、そうなんですね」


「あいつら、サンダーソードっていうパーティでな。マリカが斥候で、あとひとり魔法職がいて、残りの3人がニックを含めて剣士なんだよ。剣士が3人て珍しいよな、レティ姉さん」

「そうだね。ほら、ニックたちのことはもういいから、行くよ」



 カウンターに行くと、朝に応対してくれたドロシアがいた。


「あら、もう戻ったの? まだ午後過ぎだけど、随分と早かったのね。何かあった?」

「それがね、ドロシア。おい、エヴェ」

「あいよ」


 エヴェリーナが背負っていた丸めたリンクスの毛皮と、それから剥ぎ取った大きな爪をカウンターの上に置く。

 ドロシアはそれをじっと見つめ、そして大きく目を見開いた。


「これって、リンクスじゃない。どうしたのよこれ。あなたたち、大森林の奥地に行ったの? いちばん浅い場所で薬草の採取の筈でしょ」

「まあまあ、落ち着けって、ドロシアさん」


「落ち着けってエヴェ、ライナちゃんの初仕事で、特例でいちばん浅い場所って許可なんだから、それをいきなり破っちゃダメじゃない」


「だからよ、あたしらが行ったのは、いちばん浅い場所だぜ」

「そうのよ、ドロシア。ちゃんと浅いエリアの命起草の群生地に採取に行ったの」

「あの、採取した命起草は、これです」


 命起草が大量に詰め込まれた大きなバッグを、ライナがカウンターの上に出す。

 その中身を確かめたドロシアは、ようやく落ち着いた。


「とても奇麗に採取された命起草ね。根の先までしっかり付いている。これってライナちゃんが?」

「そうよ、ドロシアさん。ライナちゃんの土魔法って凄いのよ」

「初日にしてライナは、薬草採取の達人だぜ」


「なるほど。昔のダレルさんの話を聞いたことがあるけど、そうなのね。これは高価に買い取れるわよ。で、それはそうとして、この毛皮」

「ああ、ドロシア。その命起草の群生地にだ、リンクスが出たんだよ」


「えっ、何ですって! それって、浅いエリアの群生地よね。どうして……」

「それはわからないんだけど、まずはギルドに報告しないとと思って、だから早く帰って来たのよ」

「ちょっと待って。いまギルド長を呼んで来るわ」


 そう言ってドロシアは慌てて奥に走って行った。その姿を見て、他のギルド職員も何が起こったのかと驚いている。




 暫く待っているギルド長とエルミさんが奥から出て来て、無言でちらっとカウンター上に置かれた毛皮を見てから自分に付いて来るように言った。

 案内されたのは応接室ではなく、大きな会議室だった。


 その部屋に入ると、会議テーブルを前にしてひとりの老人がちょこんと座っている。

 あれは誰だろうかと、ライナは首を傾げた。どう見ても、あのお爺ちゃんは冒険者ではないわよね。


「あー、と、レティはグットルムを知ってるよな。あとは初めてか。ちょうど来ていて応接室で話してたんだが、こっちに来て貰った」


「わしは、鍊金術ギルドのグットルムじゃ。レティ、久し振りじゃな。なんとも凛々しく美しい女性になりおったわ。あとの可愛いお嬢ちゃんたちは初めてじゃな」

「ああ、グットルム・ギルド長、お久し振りです。相変わらずですね」


「この爺さまは、ちょっと奇麗な女性を目にすると、直ぐに涎が垂れるのよ」

「エルミは言い方が酷いの。美しい者を美しい、可愛い者を可愛いと言ってなにがいかんのじゃ」

「今日は、マグダレーナが一緒じゃなくて良かったわよね」

「ううむ。そうなんじゃが」


 この人が鍊金術ギルドのギルド長なんだ。今まで会った中で、いちばん魔導士っぽい見た目をしたお爺ちゃんだけど、魔導士じゃなくて鍊金術士なのね。


 ライナが感じたように、グッドルムは黒くて長いローブを着て、帽子こそ冠ってはいないものの長い白髪に同じく白くて長い顎髭を細長い顔を生やし、ライナが小さい時に見た絵本の中の魔法使いのお爺さんにそっくりだった。



 エヴェリーナとセラフィーナ、それにライナがグットルムに名前を告げて挨拶をし、それぞれが会議テーブルの席に着く。


「ほほう、この子が噂のライナちゃんじゃな。ダレル以来の土魔法の達人じゃとか」

「達人とかじゃないです。でも、土魔法は出来ます」

「グットルム・ギルド長、この命起草を見てください。ライナちゃんが採取したものですって」


 会議室に一緒に来て同席しているドロシアが、ライナが採取して持って来た命起草の束をバックから取り出させて、グットルムに見せるように促した。


「ほうほう、これはこれは。一級品じゃな。昔にダレルが採取していた当時を思い出すの」

「こいつはいいな。薬草採取の達人が、我がギルドに一躍現れたぜ」

「そうじゃの。これは良いポーションが作れますぞ」


「この命起草は、通常価格の1.5倍で買い取っていただくとして、問題はそっちね」

「ふーむ、1.5倍かエルミ。まあええじゃろ。で、そっちとはこの毛皮かの」


 エヴェリーナが会議テーブルの上に、丸めていた毛皮を広げた。


「これはリンクスじゃな。大きいの。それで、何が問題なんじゃ?」

「このリンクスを狩ったのは、大森林の奥地じゃなくて、ごく浅いエリアのその命起草の群生地なんだとよ」


「な、なんじゃと」

「レティ、ちょっと詳しい説明をしてくれや」



 ギルド長のジェラードに促されて、レティを中心に他の3人も補足しながらリンクスが出現して倒すまでを詳しく話した。

 特に皆を驚かせたのは、最初に狙われたのがライナでありながら、そのライナも土魔法で闘いに加わって倒したことだった。


「ふーむ、ライナも加わって倒したのか。無事で本当に何よりだった」

「このお嬢ちゃんは、薬草の採取ばかりでのうて、狩りや戦闘でもダレルの再来になるかも知れんぞよ」


「わたしは初めからそう思っていますから、それほど驚きませんけど、問題はそんな浅いエリアにいくら冬とはいえ、こんな大型のリンクスが現れたことです」

「そうだな、エルミ。グットルムはどう思う?」


「まず、これが偶々この1頭だけなのか、他にもいるのかということじゃ。偶々これだけなら、エサを求めて迷い出てしまったのじゃろうて。しかし例えば奥地に何か原因があって、他にも浅いエリアに出て来るようじゃと、これは鍊金術ギルドとしても大問題じゃ」


 グットルムの言ったことは、要するに大森林に入る許可を得たばかりの冒険者に頼っている薬草採取仕事に、支障が出るということだった。

 また、そういった若い冒険者に死傷者が出る可能性が増大する。


「そうだな。これは冒険者に注意を勧告すると同時に、早急に要因を調べなきゃなるまいな。今日は奥地にどのパーティが入ってるんだ?」


「ブルーストームが入りました、ギルド長」と、ドロシアがそう答える。


「クリストフェルたちには、帰りに大森林で会ったよ。だから話はしておいた」

「そうか、ありがとうよレティ。ブルーノがいたんだろ? だったら指示しなくてもその辺を調べてくれるだろ」


 それを聞いて、ブルーノさんてとても信頼されてるのね、とライナは思った。

 ライナはまだ良く知らないが、ブルーノはこのグリフィニアで最高の、つまり言ってみればセルティア王国で最高の斥候職であり、アラストル大森林の専門家とされているのだ。



「エルミは、何か考えはあるか?」

「ねえレティ、それにエヴェとセラ。あなたたち、今日は臨時パーティで行ったけど、ちゃんとしたパーティを組むつもりはあるの?」


 ジェラードの問いかけに、エルミはまったく別のことを言い出した。

 エルミさんはリンクスのことじゃなくて何の話かしら。ライナはそれを聞いて不思議に思う。


「レティ姉さんがうんと言えば、あたしらは組むつもりだぜ、なあセラ」

「ええ、前からそうお願いしてましたから」

「それは。今はライナがいるから、まだ……」


「レティは、ライナの面倒を見るからって、ちょっと躊躇ってるのね」

「そうなんですけれど、エルミさん。ライナはまだ冒険者に成り立てだし」


「レティは大森林の奥地に入る許可は持っていて、エヴェとセラはその手前までの許可だったかしら」

「ええ、そうです」



「わかりました。それではたった今から、ライナにエヴェやセラと同じ中間のやや深いエリアに入れる許可を、わたしの責任で与えます」

「お、おい、エルミ。それはいったい。そんな無茶な」


「ギルド長はお静かに。わたしの責任でって言ったでしょ。ただし条件があります。それはあなたたち4人でパーティを組む場合だけよ。臨時じゃなくて、ちゃんとパーティを組みなさい。もし当面は臨時でというなら、今日と同じ浅いエリアまでね。どうかしらレティ」


 レティシアはエルミのそのいきなりの提案に、直ぐには答えずに考え込んでいた。

 エヴェリーナとセラフィーナはもうそのつもりになり、ライナはエルミの真意が分からず彼女の顔をじっと見つめている。


「わたしがいま、そう提案した理由わけはね、一流の冒険者に成る資質を持っていて、それにダレルと同じように土魔法の達人に成れるライナに、早く経験を積ませてあげたいの。この子なら大丈夫。レティたちがちゃんとフォローしてあげればだけどね」


 そこで彼女はひと息ついて、そしてこう続けた。


「それからもうひとつの理由は、いま、奥地で安心してちゃんと活動出来る冒険者パーティは、残念ながらブルーストームだけなのよ。以前はレティのパーティもいたけど……。でもそれはもう済んだことだから忘れるとして、奥地に入れるパーティが早く育ってほしいというのがあるの。あなたたち4人に、その道を歩んでほしいのよ」


 普段は無口なエルミが、そうはっきりと語った。

 ライナは自分に期待してくれているその言葉が、恥ずかしいような、とても重たいような、でも自分の目指すべき道を示してくれているような気がしていた。



「今回のリンクスの件は、おそらくブルーノが調べて来てくれるわ。だから大丈夫。でもどうかしら、レティ。あなたたちがブルーノやアウニに続いて貰えないかしら」


「エルミさん、あたしら頑張るぜ。なあレティ姉さん、パーティを組もうぜ」

「ライナちゃんのことは、3人でフォローすれば大丈夫よ。それにエルミさんが言ったことって、今日一緒に闘ったのだから、わたしたちがいちばん納得するわ」


「しかし、いきなりライナを加えたパーティを組んで、もっと奥になんて」

「ライナはどう思うのかしら」


「あ、わたし、やりたいです。でも、急いでいるからじゃありません。今日わたし、わかったんです。もっと魔法を上達させて、たくさん経験を積む必要があるって。それから、姉さんたちみたいな強い人たちと、一緒に闘えるようにならなきゃって。もし、そういう機会がいただけるのなら、わたし、姉さんたちの足を引っ張らないようにして、頑張ってみたいです」



 それからもレティシアはテーブルを見つめて考え込んでいたが、ついに顔を上げて「よしっ」と声を上げた。


「わかりました、エルミさん。エヴェとセラを臨時パーティで、いつまでも浅いエリアに置いておく訳にもいかないし、わたし自身ももっと前に出て働けってことですよね。それから、ライナの才能と頑張りを信じて、良い経験になる機会を作ってあげろと」


「そうね。そんなところかしら。それでどうするの?」

「4人でパーティを組みます。そしてまずは次の段階に4人で取組みます」


「やったー」とエヴェリーナとセラフィーナ、そしてライナは両手を挙げた。

 ひとりまだ心配顔だったのは、冒険者ギルド長のジェラードだけだった。


「おお、良いぞ良いぞ。グリフィニアには、お嬢ちゃんたちみたいな若くて優秀で可愛い冒険者が、もっと上を目指すのが必要じゃて。でもライナちゃん、薬草もちゃんと採取して来てくだされよ」

「はい、もちろんです」


「どう? ジェラード」

「わかったよ、エルミが認めて提案したことじゃ、俺には反対出来ねえだろうが。レティ、頼むぞ。俺から許可を出す。パーティの届けもちゃんと出せよ」

「はい、わかりました、ギルド長」



 こうしてライナは今日、冒険者としての初めての仕事、初めてのアラストル大森林、初めての戦闘と狩りを経験し、そしてパーティに参加して活動することが決まった。

 思えばバラーシュ村をひとり出てから、まだほんの1ヶ月にもなっていない。


 自分で決心をして、行動をして、良い出会いを重ねれば、こんなにも自分が立つ環境や位置が変わるものなのね。

 でも、それもまだまだ入口を入ったばかり。これから頑張らなくちゃ。

 入口から入るのも大変で大切だけど、そこから歩いて前に進めなきゃ意味がないわ。



 そうだ、お婆ちゃんにお手紙を書こう。あと、お父さんとお母さんとウル兄にも。

 わたしはグリフィニアで冒険者の道を歩き始めましたって、胸を張って報告しよう。


「ライナ、なんだかニコニコしてるな」

「嬉しそうよね、ライナちゃん」

「一緒に頑張ろうね、ライナ」

「はい、姉さんたち。これからもよろしくお願いします」


 とびきりの笑顔と大きな声で、ライナはそう返事をした。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


「魔法少女のライナ」は今回で完結、いえ取り敢えずは第一章の終了となります。

この続きの物語は少し時を置いてまた、ということにしたいと思います。


本編はまだまだ続きますので、お読みでない方がいらっしゃいましたら、そちらもよろしくお願いします。

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