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色々な話をしているうちにルリやハンスの緊張が薄れてきて会話もスムーズに出来る様になっていった。
「先代の魔女殿の旦那って俺の親戚なんだよなぁ~。会った事ないからいまいち実感が湧かないぜ。ルリちゃんは会った事あるの?」
「いえ、私も会った事はないですね。師匠が私を拾ってくれた時には既に死んでしまってたから顔は見た事ないですね。でも、師匠がよく亡くなった旦那さんの話をしてたので知らない人って感じはないですね~。」
「僕は赤ちゃんの時に会った事があるよ!あんまりハッキリと覚えてないけど、優しい人だったよ!よく優しい手で僕を抱っこして撫でてくれたんだ♪」
「お、シロは会った事があるのか。流石、長寿の竜だな。俺はじいさんから話を聞いただけだからあんまり魔女の親戚って感覚はないかな~。」
「私は元々、師匠とは血の繋がりは無いですから親戚関係ですらないですね。でも、師匠とは仲の良い夫婦だったのはわかりますね。酔った師匠がよくノロケてたので。」
「へ~よっぽど好きだったんだなぁ~。奥さんにそんなに思われてたら亡くなった旦那さんも奥さんの側から離れたくなくて中々成仏出来なかったかもな!」
「う~ん。師匠とは一緒に暮らしてましたけど、幽霊が出たとか怪奇現象とかは何も起きませんでしたよ?ああ、でもたまに師匠の夢の中に亡くなった旦那さんが出てくるって言ってましたね。」
「うんじゃあ、お空の上からお師匠さんの事見守ってて会いたくなったら夢の中に出てたのかもな♪そう言えば、お師匠さんには子供とか居なかったのか?奥さんも心配だろうけど、子供が居たならそっちも心配だっただろうに。」
「子供は居ました・・・。けど・・・。」
「性格が最悪だったんだよ!自分の母親なのに奴隷のように働かせて!そのくせ、お金は1銭もくれなかった最悪のやつがね!一人息子だったから亡くなった旦那さんの遺産も全部独り占めしやがったんだ!」
「え!自分の母親をそんな風に扱ったのか?そりゃあ、最低なやつだな。でも、金を取られてたんじゃ暮らしは大変だったんじゃないか?お金無かったんだろう?」
「お金はありましたよ。亡くなった師匠の旦那さんがコッソリ隠してたお金と師匠が作った薬を平民の方達に売っていたので、収入はありました。息子の方は師匠に薬を作らせてそれを貴族相手にだけ売っていたので平民は相手にしてなかったんですよ。」
「そりゃあ、金にがめつい奴だなぁ~。平民じゃ儲けにならないからって貴族にだけ売ってたんだろ?しかも、薬師の魔女が作った薬は貴重だから貴族連中はソイツにすり寄ってたのが目に浮かぶぜ。」
「そうなの!もう、ホントにアイツら最悪だったんだから!僕を見て剥製にしたいとか!ルリを売れとか言ってきて!何回本気で国ごと沈めようと思ったか!思い出しても腹が立つ!」
「うわ~。やっぱ最悪だな。ルリちゃんは大丈夫だったか?ケガとか無体を働かれたりしなかったか?」
「私は大丈夫でしたよ。師匠やシロが庇ってくれてましたし。なるべく、一人で行動しない様にいつもシロが側に付いていてくれましたから。むしろ、シロが怒って相手に反撃したり気絶させたりするのでやり過ぎない様に止める方が大変でした。」
「はっはっはっは!そりゃあ良い。まともに戦闘をしたことも無い貴族のバカ共にはシロの反撃は堪えただろう♪」
「うん♪アイツら僕がちょっと威嚇しただけで腰抜かして気絶したり、泣きわめいたりしてぜんぜん歯応えがなかったよ!あんなんで、僕やルリを欲しがるなんて100万年早いよ♪」
「はっはっは!違いない!」




