9話 露店にて
それではどうぞ。
ミーナの家で暮らすようになってから数日が経った。
とくに何事もなく過ごしている。
朝早くに、ミーナに見送られながら露店を開いている場所に木彫りの細工品を売りに出かけて、夕方前には帰ってくる生活だ。
ミーナは、俺を見送った後に教会に行っているそうだ。そして、帰ってくる途中に夕飯の材料を買い、二人で一緒にご飯を食べている。
以前は宿代を払う必要があったので残りのお金を見ながらひやひやしていることもあったけれど、今は宿代を払う必要もない。
やっぱり家があると安心できるよね。
あ、ちゃんとミーナにお金は入れている。
といっても細工品はいっこうに売れないので、以前、リアからもらったお金の残りを少しずつ渡している。
さて、今日も出かけるか。
そう思い、ミーナに声をかける。
「ミーナ、行ってくるね。」
彼女はいつも朝見送る時と同じように嬉しそうな顔でしてこちらに手を振る。
「リト、気を付けてね。」
俺もミーナに手を振ると露店のある通りに向かって歩き出した。
◇
いつもの場所に着いて、地面に座るための敷物を敷くと、持ってきた荷物の中にある細工品を前に拡げて準備をする。
今日は売れるといいんだけれどな。といっても以前ほどの焦りはない。
いや焦った方がいいのか?
うーん、新しい細工品でも考えるかな。
考え事をして時間が過ぎてくると、前を通る人の数も増えてくる。
少し足を止めて見てくれる人も少しいるけれど、買ってくれるまでには至らない。
どうやら今日も売れそうにない。
「はぁ。」
溜息をついていると、影が差し掛かる。
ふと見上げると、前に人が立っていた。
「どうですか、買っていきませんか。」
声をかけて顔を見ると、知った顔だった。
俺の顔を見て、にこりと笑うと元気よく声をかけてくる。
「兄さん、久しぶり!」
「アミス!?」
目の前にいたのはずいぶん会っていなかったアミスだった。
「元気だった? 兄さん。」
「ああ、元気だよ。それにしても久しぶりだな。元気だったか?」
たしか剣の修行をしていたんだっけ。
中々会えなかったということは大変な修行だったんだろう。
今日ここに来たということは、修行が一段落して会いにこれたということだろうか。
「ええ、元気よ。」
「会い来れたってことは修行は終わったのか?」
「もちろん。兄さんに会いたくてぱっと終わらしてきたわ。」
そう言って腰に下げてあった木製の剣をポンっと叩く。
「修行が終わるまで城から出たらだめって言われてたの。最後は勝ち抜き戦で勝ったら城から外出してもいいって言われたから、この剣で勝ち抜いたの。」
その時のことを思い出しているのかニヤリと笑うアミス。
な、なるほど。
アミスにも逆らったらだめかもしれない。
そう思う。
「といっても、完全に終わったわけじゃないんだけどね。まあ、外出はできるようになったから良いんだけれど。」
「それは良かったな。これからはいつでも会えるようになったってわけか。」
「そうなのよ。……それより、兄さんの方が大丈夫なの? ちゃんと宿に泊まれている?」
どうやら、俺がミーナのところにいっしょに住んでいることは知らないらしい。
俺はアミスに説明する。
「え? ミナ姉のところに住んでる?」
突然、怖い顔をしてぐっと詰め寄るアミス。
俺はなんとか返事をする。
「あ、ああ。」
「どういうこと?それ?なんでそうなってるの?」
あれ、もしかして不味いことを言った?




