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7話 自分の部屋

それではどうぞ。

「まずは作業場に行きましょう。」


ミーナの後をリアと二人でついていく。

一階の奥に向かい、廊下の突き当りの右にある扉を開ける。

そこは、広い部屋になっており、夜でも作業できるようにか、ランプが設置されていた。

窓から向こうの景色を見ると、場所は玄関のある面とは反対に位置しており、ちょうど裏庭に面しているようだった。


「ここがリトの作業場よ。奥の扉を開けると裏庭に通じていて、そこには素材になる木をおけるの。」


「すごいな。」


俺は思わず感嘆の声をあげる。


「た、たしかにすごいですね。この部屋、私の部屋よりも広いですよ……。」


リアも少し羨ましそうに部屋の中を見渡す。


「そうでしょ。」


ミーナは褒められたことが嬉しいのか満面の笑みを浮かべていた。


「ありがとう、ミーナ。」


俺は心の底からお礼を言った。


「ふふ、別にずーっと使ってくれても良いのよ。」


「な!?」


リアがミーナの方に慌てて振り返る。


「どうしたんだ?リア。」


ミーナの言葉に何かおかしなことでもあったか?

リアに聞くと、彼女は頭を振り。


「い、いえいえ、何もないですよ。ええ。」


そう言った。

そんなリアを気にすることもなくミーナが。


「それじゃあ、次はリトの部屋に向かいましょ。」


「ん?もう場所は決まっているのか?」


疑問に思い、ミーナに聞いてみる。


「ええ、初めから決めていたの。さ、リトの部屋は2階よ。」


そう言って、部屋を出て行ったミーナに続く。


ん?


「リア、何してるんだ?行くぞ。」


「は、はい。……くっ、かなり点数を稼がれているような気がします……。」


なぜか悔しそうなリアを置いて俺はミーナを追いかけた。



階段を上り、ミーナが立っている場所に向かう。

そこは同じような扉が5つ並んでおり、ちょうど右から二つ目の扉にミーナはいた。


「さ、ここがリトの部屋よ。入ってみて。」


ミーナに促されて、俺は扉を開ける。


「うわー。」


思わず声を上げる。

そこには宿にあったものより上等なベッドと、座り心地のよさそうな椅子や高級そうな机が置いてあった。


「どう?気に入った?」


ミーナが期待するように聞いてくる。


「え、いや、すごいな。うん、気に入ったよ。でも本当にこんな部屋に住まわせてもらっていいのか?」


俺はちょっと心配になってミーナに聞く。


「いいのよ。だって、リトのために準備したんだもん。」


ミーナは悪戯が成功したかのように楽しそうに笑みを浮かべる。


「そうならいいんだけど。……でも本当にすごいな、この部屋。」


俺は部屋の中を見渡した。この街に来た頃に住んでいた馬小屋とはまさしく雲泥の差だ。

……まあ、あそこと比べると今日まで住んでいた宿と比べても雲泥の差なんだけど。


「それじゃあ、また下に戻りましょうか。」


「ああ、そうだな。」


そう言って部屋から出る。


「ちょっと待ってください!」


すると、さっきまで沈黙を保っていたリアが突然に待ったをかけた。


「どうしたんだ? リア。」


何かおかしなところでもあったんだろうか。

ミーナも不思議そうに顔を傾げている。


「ミーナの部屋はどこなんですか?」


リアは問いただすようにミーナに詰め寄る。


「え? 私の部屋?」


「そうです。」


「それはもちろん隣よ。部屋は5つしかないんだからわざわざ離す必要もないでしょ?」


「うっ、た、確かにそうですが。で、でも隣の必要はないんじゃないですか。」


ひどく食い下がるリア。

俺は別に隣でもいいけど……。


「え?そうかな? 別にいいでしょ、ね、リト。」


え!?俺?


心の中ではそう思っていてもまさか同意を求められるとは思ってもいなかった。

ちらっとリアの様子をうかがうように彼女の方を見る。リアは恨めしそうにこちらを見ていた。

俺はそれを確認すると、リアからさっと目をそらす。


ごめん、リア。やっぱり家主に方に俺はつく。


「え、えっと、まあいいんじゃないかな。」


「そうでしょー。」


喜ぶミーナの横でリアは、くっとうめき声をあげていた。


そう言えば俺、ミーナに完全に衣食住のうち、住を抑えられたな、これ。

いや、待て、食もじゃないのか。


……深く考えないようにしよう、うん。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王都に来てから本気になったリアと 長い付き合いで離れる気の無かったミーナでは 幼馴染ちゃんに一日の長があったね(下準備の日数的な意味で) [気になる点] 女好きっぽい勇者がリアに手を出して…
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