6話 お茶
それではどうぞ。
ヒルデガルドのお願いを思い出していると、ジトーっとした視線を感じてその先を追うと、そこには俺を見るリアがいた。そう、ソファーの俺の横に座って俺を見ていた。
「……えっと、何か?」
「リトさん、何を考えていたんですか?」
「え、いや、特に何も。」
ぐっと近づいてくるリア。
「本当に?ここに二人も女性がいるのに、他の女性のこと考えていませんでしたか?」
な、なんで分かったの? い、いやさっきのは別に疚しいことはないはず、だよね?
「そ、そ、そ、そんなことないよ。」
いや待て、まるで妻に浮気がばれて問い詰められた夫のような感じになってないか!?
「……そうですか?」
「う、うん、そうだよ。」
だ、誰か助けを呼ばないと。
「ちょっと、二人とも何やってるの?」
「ミーナ。あっ、私も何か手伝いましょうか?」
ちょうどお茶を入れたミーナがやってきた。リアもミーナを手伝うためにソファから立ち上がる。
はあ、助かったみたいだ。
「あ、そうだ、リト。さっき何を考えていたのか私にも教えてね。」
へ!?
ミーナの参戦を受けて、俺は観念し素直に頷くのだった。
俺はミーナとリアにさっき思い出していたことを話す。
「たしかにね、それはリトのためにも良いことね。」
「そうですよね。私から頼んでおいて言うのも何なんですが、リトさんはちょっと無防備な時があるので、ちょっと心配です。」
「そうね、私たちが近くにいる時だったら助けられるかもしれないけれど、いつも一緒にいるとは限らないしね。」
ミーナは問題があるようには思わなかったようで、優雅にお茶を飲みながら、そう言うと俺の方を見た。ミーナの様になったお茶の飲み方に少し見とれる。
彼女は俺がジーっと見ているのが気になったのか。
「えっと、どうしたの?リト。そんなにじっと見て。」
「え、いや、その様になってるなって思って。」
「え!? まあ、そうね。聖女をやっているとお偉いさんとお茶をする機会も多いしね。それに友人とお茶を飲む機会もあるし。」
友人とお茶って、どんな貴族生活なんだ。いや、聖女様なんだから貴族みたいなものか?
そう思っていると、ミーナが思い出したように胸も前でパンっと手を合わせる。
「あ、そうだ。今度友人を紹介するわ。みんな、リトと会いたがっていたの。」
「ミーナ、リトさんに会わせたい友人って、もしかして聖女の方々ですか?」
「ええ、そうよ。」
「な、なるほど。リトさんの知人ってどんどん凄くなりますね。」
まあ、そうだけど、リア、お前もその一人だと思うよ。
◇
それから少しして、カップのお茶も少なくなり、話が一区切りついたと思ったのか、リアが思い出したようにミーナに質問する。
「あ、ミーナ、そういえばリトさんの部屋とか、作業場ってどこなんですか?」
「え? ああ、そうね。リト、それじゃあ部屋を見に行きましょうか。」
俺は頷くと、立ち上がったミーナの後を追いかけた。




