31話 突然の来訪
それではどうぞ。
いつも誤字報告ありがとうございます。
ドンドン!
突然扉を叩く大きな音にびっくりする。
メリッサは落ち着いた様子で扉の向こうに声をかけた。
「どうぞ。」
ガチャリと扉が勢いよく開く。
ドアの向こうには、俺より頭二つ以上は背が高い、厚い筋肉に覆われた頭のはげたおっさんが立っていた。
「おう、メリッサ。ん? すまん、客が来ていたのか。」
そう言いながら中に入ってくる。
「いえ、構いません、バーケルン。何か御用ですか?」
「ああ、ちょっとこの書類について聞きたくてな。」
おっさんの手には紙が一枚握られていた。
なんかお偉いさんみたいだし、俺も立ち上がって頭を下げておくか。
そう思い立ち上がり頭を下げておく。
それを見たおっさんは、手を挙げてあいさつしてきた。
「おう。……で、だれだこいつは?冒険者には見えないが。」
「私の知り合いですよ。彼が私に相談事があって来ていたんです。」
「ほう。うーん、あまり強そうには見えんな。お前が相手するような存在か?」
「……。」
ちらりとメリッサの方を見ると、何も答えずに笑みを浮かべていた。
おっさんの方に向きなおすと、ニヤリと笑みを浮かべる。
ん?
すると、おっさんが一瞬で姿を消す。
んん?
次の瞬間には大きなこぶしが俺の目の前にあった。
「なんだ、全く反応できてないじゃないか。こんなやつが本当に目をかけるような存在か?」
俺の方をじろじろと見てくる。
俺は腰が抜けたようにぺたんと座り込んだ。
うん、全然見えなかった。
もし戦っていたら(そんなことはありえないが)、気が付いたら頭が弾けるパターンだな、これは。
メリッサは溜息を一つつく。
「はあ。バーケルン、彼のジョブは生産職ですよ。反応できるわけないじゃないですか。」
彼は全く悪びれた様子もなく、座り込んだ俺の肩を叩いて謝ってきた。
っていうか叩かれた肩が痛い。
「ああ、そうなのか。いやー、すまんすまん。あははは。」
「はあ。あなた、聖女様に殺されちゃうわよ。」
ぼそりとつぶやくメリッサ。
聖女ってあいつだよね。
気になったのかおっさんも聞いてきた。
「ああ? 聖女ってどの聖女だ?」
「それはもちろん、勇者パーティの一員、聖女ミーナに決まっているじゃない。」
「へ?」
顔を若干引きつらせるおっさん。
っていうか、こんなおっさんを引きつらせるミーナに引くな、俺は。
なんか、この前からミーナの新たな一面ばから明らかになるよな。
「彼、リトさんは彼女と同じ村出身の彼女の幼馴染。結婚を約束した仲だそうですよ。」
「な、そ、そうか。あ、あははは。それはすまんかったな。」
「あ、いえいえ、構いません。」
俺はとりあえず大人の対応をしておいた。
これも前世の知識のなせる業だね。
ん?……そういえば、その約束、結局どうなってるんだっけ。




