7話 手紙
ある日、村長のもとに王都から俺宛に手紙が届いた。
この世界では、元の世界のように軒先にポストがあるわけではない。まあ紙自体が高価なものだし、普通に村で生活しているとお目にかかることはない。
手紙を書ける知り合いなんてミーナぐらいだろうと思い、村長の家に向かう。何故かアミスも着いてきた。
「チッ、あの泥……猫、いまさら何を…。せっかく兄さんと……。いや、別れの……かも。だったら、……うひひ。」
後ろでぼそぼそとしゃべっているアミス。
うつむき加減で気のせいか目が光って見える……いつにも増して怖い……。
こいつ、まさか重度のブラコンに加えてヤンデレか?
村長から手紙を受け取り差出人をみると思った通りミーナだった。
まあ、王都に知り合いなどいるわけがないしな。
他に思い当たることはスキルだが、ばれたのだとすれば悠長に手紙が来るわけがない。いきなり兵士に囲まれ、よくて連行、最悪その場で切られるだろう。
村長に了解をとり、その場で手紙の封を開けると中には数枚の紙に文字が書かれていた。
リトヘ、
そんな始まりで書かれていた手紙には、要約すると次のようなことが書かれていた。
いままで連絡できず、申し訳ないということ。
今は勇者様と仲間たちと各地を巡回し人々を手助けしているということ。
時々、村での生活が恋しくなると言うこと。
最初は怖いことが多かったけれど、勇者様のおかげで最近はそれも薄れてきたということ。
今度、勇者様たち一緒と村に寄る機会があるということ。
その時に俺に伝えたいことがある。
……そんなことが書かれていた。
「良かったな、リト。ミーナは近々、勇者様と一緒にこの村に訪問するそうだ。」
「……そうですね。」
村長には一言だけ返す。ただ、心の中では……。
いや、はっきり言って、これって寝とられてるでしょ。
伝えたいことって別れ話ですね、分かります。
いやいや待てよ、そもそも結婚もしてないし……間違いないよな、あれは。
正確には結婚の約束の直前だったんだから寝とられではないか……。
よし問題なし。
前世では学生、社会人と過ごす中で彼女もいたことがあれば別れた経験もある。
俺は、そう思っていた。ちなみに、隣で一緒に見ていたアミスは俯きながらも、口元には三日月のような笑みを浮かべていた。
◇◇◇◇◇◇
とうとうアミスの選定の儀の日がやってきた。
「兄さん、緊張するね。」
「まあな、でも聞くだけだからな。」
すでに経験済みの俺は大したことないと答える。
「もう、兄さんは。」
そんなことを言いながら、あきれるようにこちらを見るアミスと一緒に順番を待つ。
そして、いよいよ彼女の順番が回ってきた。
神父様の前に立つアミス。
「アミス、あなたのジョブは……。 な!?」
神父様が一瞬詰まる。
いやな予感がする……。
周りが静まり返り神父様の発言に注目する。
「おほん。 あなたのジョブは剣聖です。」
周りがざわついた。
「へ?」
戸惑い、何が起こったのか理解できていないアミス。
あ、これよくある勇者のお供のお別れフラグだ。
俺はそう思わずにはいられなかった。