26話 リアの話(下)
お待たせしました。
最後になります。
それではどうぞ。
黙っている俺を気にすることもなく、リアは話を続けていた。
「研究でよい成果をあげるっていうのも一つの手なんですけどね。……何か良い研究題材でもあるといいんですが、これもなかなかなくて。」
「なにか思い当たるものはないのか?」
俺は少しだけ詳しく聞いてみる。
彼女はちょっと考えた後。
「……魔眼。魔眼ってあるじゃないですか。」
突然の単語に俺はドキッとする。
魔眼?え?それってなんの魔眼?
時々、何かに気づいている様子のリアの記憶が頭の中をめぐる。
やっぱり、もしかしてばれてる?
「あ、リトさんも魔眼でしたっけ。私の研究の題材にしたいのはリトさんのような遠視のものではなくて、伝承やおとぎ話に出てくる精神を操作する系なんです。」
俺の焦る様子に気づいたのか、笑いながら俺の魔眼ではないと否定してきた。
ん? ばれてはいないみたい、だな。
ていうか、そういう設定だったな、やばい、時々忘れそうになるよな。
「調べてみると精神操作系って実はいろいろあるみたいなんですよ。一番有名なのは魅了ですよね。他にも幻惑とか暗示とか……。お師匠様にそのことを言ったときには笑われましたけどね。今の時代、精神操作系の魔眼持ちが表に出てくることはないみたいです。どうやら精神を操作する魔眼の色を持つ子供が見つかると、国のとある機関が秘密裏に処分しているみたいなんですよね。」
うん、全部ありますね。
ていうか、こわ!?めっちゃコこわ!
そんなこと知りたくなかったですよ、リアさん!
絶対ばらせないよな、やっぱり。
俺は突然知らされた驚愕の事実に冷や汗をかく。
「どうしました?リトさん。……ああ、鷹の眼ぐらいだったら大丈夫ですよ。眼の色が赤だったら間違いなくターゲットにされてましたけどね。」
あはは、と笑うリア。
「でも二つの魔眼を持っていたら何色になるんでしょうね。って、そんな稀有な人なんかいるわけないですけどね、あははは。」
いやいや俺はぜんぜん笑えないですよ。
そんな俺の気も知らず、彼女は一通りしゃべってすっきりしたのか、一つ伸びををすると、こちらを向いて御礼をいう。
「ありがとうございます。こんな話、聞いてくれる人もいないし、すっきりしました。そろそろ帰りましょうか。」
それは良かったです。
まあ、逆に俺は知りたくもなかった話を聞いて憂鬱な気持ちになりそうだけれど。
一方、リアは、リトさんのおかげですね、とすごく良い笑顔を見せてくれた。
……まあ、そんな笑顔を見せられると俺も悪い気はしないのではあるが。




