25話 リアの話(中)
続きをどうぞ。
誤字報告ありがとうございます。
リアは俺の反応は特に気にせずに話を続ける。
「魔術師になった後に分かったのですが、後ろ盾のないポッとでの魔術師はなかなか出世できません。とくに私は貴重な魔道具を持っているわけではないですしね。なにか実績を作る必要があったんです。」
「お師匠様は後ろ盾になってくれるんじゃないのか?」
「もちろんある程度は後ろ盾にはなってくれているんですが、お師匠様も貴族ではなくて、一代で地位を築かれた方なので、引退した後だとギルド内でそれほど力を持っているわけではないんですよ。」
あはは、と力なく笑みを浮かべるリア。
「なのでユウヤさんの、勇者のパーティに入ることにしたんです。」
ユウヤの?
「はい。新しく来た若い勇者が召喚されたということで、パーティメンバーに同年代の女性の魔術師を国がギルドを通して探していたんです。お師匠様はパーティへの加入はやめた方がいいと言っていましたが、手っ取り早くギルド内での地位を築くために飛びついたんです。」
「え? お師匠様は止めてたんだ。」
「そうですね。国も何かしらの思惑があって人を選んでいたみたいですし、宮廷魔術師をされていたお師匠様はなんとなく分かっていたんだと思います。ほら、パーティメンバーって若い女性が多いでしょ?」
たしかに、ミーナ、リア、……それにアミスもか。メリッサは……若いのか?
ゾクッ!?
俺は突然、背中に氷を入れられたような感覚に驚き、キョロキョロと周りを見る。
「どうしました?」
同じように周りを見て不思議そうな顔をするリア。
「い、いや何でもないよ。」
どこかで覗いてるんじゃないだろうな、メリッサ。
「入った後だとパーティに若い女性が多い理由はなんとなく分かっては来たんですが。まあ、メリッサさんがパーティにいる理由はきっと違うんでしょうけど。」
そうなのか?
まあ、たしかにメリッサは何か思惑がありそうではあったよな。
本人も人材発掘とか言っていたし。
「パーティに入ってギルド内の地位を築いて資金を貯めてって思っていたんですけどね。なかなか上手くいかないんですよ。……それにほら。」
そういってリアは俺に杖を見せる。
「この杖はお師匠様から頂いた杖なんです。これでもそこらの店で売っている杖より貴重なものなんですが、ヒルデガルドさんの持っていたものに比べると見劣りします。由緒正しい杖は国や古い貴族の家から出てくることはありませんし、貴重な素材で作られた杖も真っ先に貴族に流れていくので……。地位もコネもない私にはここら辺が限界なんですよ。」
はあ、とため息をつくリア。
うーん、これは慰めた方がいいのか?
いや、でも下手に慰めると逆にダメなことも……。
結局、俺は黙って深く頷くことにしておいた。
だって前世でも女性の話を聞くとは黙って聞いておいた方がいいって言ってたしな。




