23話 採取完了
それではどうぞ。
その後、フラグを回収するようにヴァンパイアクラスの魔物が……、出てくることはなかった。
あれ? ちょっと想像と違う?
これからリアでも敵わない魔物が出てきて、俺がやむを得ずにスキルを使ってなんとか脱出する、……みたいなことも覚悟したんだけど……。
もっと言えば、ほとんど魔物が出てくることもなく、二人で順調に素材になりそうな木を探していた。
まあ、木は周りにたくさんあるんだけどね。
リアが、自分の腕輪になる素材なので少しでも良いものといって聞かないんだよね。
どうやら魔力がこもっている木がいいらしい。
俺は魔力があるのか分からないから、リアが探し歩く、横について周っている。
へ? 座って待っていればいいのにって?
だって怖いんだもん、魔物。
「あ、あの木がいいです。あれ。」
そう言ってリアが手前に見えた木を指さすと、その木に駆け寄る。
うーん、一見すると……比較的大きな普通の木だ。
木の幹は俺の胴周りより大きい。どうやらあの木がお目当ての木らしい。
俺も慌てて彼女について行く。
リアはお目当ての木の傍によると、木をペタペタと手で触って感触を確かめていた。
「よし、この木にしましょう。」
「この木でいいのか。でもどうするんだ?周りに手ごろな木の枝は落ちてないぞ。」
俺は木の周りの地面を見る。細い枝は落ちているけれど、腕輪になりそうなぐらいの太さのものはない。
リアはこちらを見て。
「大丈夫です。あ、リトさん、ちょっと離れてくださいね。」
そう言って手を上に掲げた。
俺はそれを見て慌てて後ろに下がる。
と同時に、リアの手から風の刃がはなたれる。
ちょうどその先には少し太めの木の枝。
スパッ。
そんな音がしたような気がした。
リアの手から放たれた刃は枝にぶつかっても抵抗なくすり抜け、あっさりと枝を切り落とす。
「よし!」
リアは、落ちてきた枝に近寄って満足そうにそう言った。
「リトさん、どのくらいの大きさが必要ですか?」
リアは俺の方を見て、腕輪に必要な素材の大きさを確認してくる。
まあ、あの枝であれば、手に持てる程度の長さにしてもらっても問題はない。
俺はリアにもう少し短い長さがいいと説明する。
リアは頷くと、枝に手を向ける。
スパッ。
枝が程よい程度に切られる。
あ、そうやるんだ、魔術って便利だね。
リアは木の枝を持つとこちらに見せる。
「これぐらいでいいですか?」
「あ、うん、それぐらいで十分だ。せっかくだからそのサイズがあと二つぐらい持って帰りたいんだけどお願いできる?」
リアは笑顔を見せると。
「それぐらいは構いませんよ。」
快くお願いを聞いてくれた。




