6話 ブラコン
あれから半年が経った。
村長からは、王都で勇者が召喚され、そのお供としてミーナが選ばれたのだと聞かされた。
なぜこんな辺境の村の人間をお供に?と思わなくはない。
村長は俺とミーナとの関係を知っていたようで、申し訳なさそうに何度も謝られてしまった。
あれからミーナの詳細な状況は分からないが、噂程度に勇者と聖女の話が伝わってきた。
やれ魔族に襲われていた街を救っただの、やれ凶悪な魔物を討伐しただの、まぁ、元気にはやっているようでよかった。
ただ、一度くらい手紙でも送ってくれてもいいんじゃないかな。約束を果たすことなく分かれてしまったので、さすがに少し堪えたし……。
もし前世の記憶がなく、もっと精神的に未熟だったらミーナを追いかけてたりしたのだろうか、あるいは、ラノベでよくあるパターンの忘れられずに待ち続けるとか……。
これがラノベでよくある幼馴染が連れ去られるフラグというやつだろうか……。
あの時、魔眼を使っていればまた違った結果になっていたのだろうか、それとも変わらなかったのだろうか、ふとそんなことを思う。
いやいや、スキルは使わずこの村で平穏にがモットーだ。
というか、これもフラグか!?
「兄さん、まだ、ミナ姉のこと引きずっているの? 元気出して、ね?」
ミーナと二人で座っていた場所にひとりで横に座り考え込んでいると、アミスが覗きこんできた。あれから、一人で考え事をしていると、アミスが元気付けようと話しかけてくることが多くなった。
アミスももうすぐ15才。顔にはまだ幼さは残るものの、所々女性らしさを帯びてきている。具体的には、腰回りとか、お尻とか。
……胸は残念ながら成長途中のようだ。
成長途中のとある場所を見ていると視線を感じ、ふと顔を上げると、我が妹がジト目でこちらを見ていた。
「……兄さん、どこ見てるの?」
慌ててごまかす。
「……はぁ。 元気がでたのなら別にいいけど。」
ミーナがいなくなって以来、アミスは以前に増して、事ある毎にくっついてくるようになった。
前世の知識から言えば、ブラコンていうやつだ、おそらく重度の。
……なぜ、こんなブラコンになったのか、いや元々か。
思い返してみるとその兆候は十分にあったし。
かわいい妹の将来が心配になり聞いてみる。
「そう言えば、もうすぐ選定の儀だな。 アミスは何になるんだろうな。」
「うーん、村の生活に役に立つものがいいな。 狩人とか? 兄さんのご飯を私が採ってくるの。」
「いやいや、おまえいつまで一緒にいるつもりだよ。」
「決まっているじゃない、そんなのずっとよ!」
当たり前のように言う妹にドン引きした。
妹の将来がさらに心配になった。
いや、ほんと……なんでこんなブラコンになったのか。