13話 久しぶり
それではどうぞ。
食堂の入り口から覗き込む。
やっぱりミーナだ。
彼女は窓側に面した机のイスに一人座り、ぼーっと外を眺めていた。
周りの机にはこの宿に泊まっているのであろう冒険者が朝食をとっている。
いや、ちらちらとミーナの方を見て、ひそひそと何かを話しているようだった。
ミーナは教会のシスターのような服を着て、傍にはいつものこん棒が置いてある。
あの格好を見ると、彼女が教会関係者ということは見て分かるだろう。
……こん棒はさておき。
耳を澄ませて入口近くにいる男女の冒険者の話を聞いてみる。
「おい、なんで宿屋の食堂に教会関係者がいるんだよ。」
「知らないわよ。それよりあの服って王都にいる聖女様が着ている服じゃないの?」
「そうなのか?たしかにシスターの服より上等には見えるが……。」
「ええ、だってわたし、聖女様のお披露目のパレードの時に一度見たことがあるもの。」
「へえ?……ん!?ってことはこん棒を持っている聖女様といえば……。」
うーん、どうやら周りも気づいているみたいだ。
こん棒をもった聖女は珍しいらしい、……ってそりゃそうだろう。
俺、なんでこん棒を渡したんだろう。
深い悩みにとらわれていると後ろから声をかけられる。
「あんた、なにやってるんだい。」
うわ!?
思わず声を出しそうになるのを思いとどまる。
後ろを見ると、宿屋の女店主だった。
「あんた、あきらかに不審者ぽかったわよ。」
そう言った後、俺が見ていた先を見て納得したよう顔をする。
「ああ、聖女様かい。あんた知り合いなんだろ。朝早くにやって来て、あんたが起きてくるのを待ってるって言って、あそこに座っているのさ。」
なるほど、説明ありがとうございます。
……いやいや、なんでこの宿知ってるの?
まあ、答えは一つしかないけど。
リアがミーナに教えたんだろう。
しかし、次の日にはもうやって来るとは……。
問題はリアからどんな話を聞いたかだな。
「ほら、いつまで隠れてるんだい。さっさと彼女のところに行きなよ。」
そういって、彼女は食堂の中に入って行った。
いつまでもこうしていても仕方がない。
覚悟を決めるか。
俺は食堂の中に入って行った。




