10話 登録
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受付嬢(仮)はふう、と一息。
元いた場所へと戻っていって肘をつくと気怠そうにしている。
「さあ、行きましょう。」
そう言って俺の腕を引っ張って、彼女の方へ向かっていった。
「ああ。」
俺はおとなしく着いていった。
◇
受付嬢(仮)は気怠そうにしたままリアの方を見る。
「リア様ぁ、御用とは何ですかぁ。」
「ええ、フーリエ。今日はこの人、リトの用があるんです。」
「こちらの方ですかぁ?」
二人にじっと見られる。
えっと二人とも何でしょうか……。
あと、この受付嬢のフーリエ?の語尾がすっごい気になる。
は!?
いま気が付いたけど彼女の耳。……ちょっと長い?
まさか!?
ファンタジー小説につきもののあれか? 彼女の種族はあのエルフなのか?
……実は俺はこの世界で人間以外の種族とちゃんと話したことはない。
村にはいなかったし、王都に来てからは少し見かけることはあっても話をする機会はなかった。
はあ、これがエルフかぁ。
じーっと彼女の耳を凝視する。
「どうしました、リト。フーリエの耳をじっと見て。」
リアが俺の目線を追ってフーリエの方を見た。
「あ、あのそんなにじっと見つめられるとさすがに恥ずかしいんですけど。」
さっきまでのけだるい感じが抜けて、うつむいて恥ずかしそうにするフーリエ。
ちょっとかわいい。
……あ、語尾も普通になってる。
「おほんっ。」
咳ばらいを一つするリア。
彼女はこちらをジト目で見ると。
「リト、ミーナに言いつけますよ。」
ビクッ。
いやいや、なんでそこでミーナ?
さらに彼女の追撃は続く。
「あと、アミスにも。」
「あ、はい、ごめんなさい、」
とくに悪いことをしたはずはなかったのだが、彼女たちに知られると飛んでくることが容易に想像される。
とりあえず、謝っておくことにした。
「そ、それでリトさんのご用は何ですかぁ? 冒険者登録、じゃないですよねぇ。」
「どうして? って、ああ、さっきのジョブが聞こえてたのね。用は別だったんですけど。……うーん、そうね、やっぱり登録もしておきましょう。」
「え? 俺戦えないぞ?」
ジョブの種類で得意なことが決まってくるので、木彫り職人の俺では魔物と戦うのはさすがに無理がある。
まあ、スライムとからなら倒せるだろうけど。
え? 近接戦闘職でなくてもこん棒を振り回すどこかの聖女もいる? ……いや、あれは例外だろう。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、リアはこちらを見てメリットを説明する。
「別に戦えなくても登録しておけば便利なこともあります。身分証明書にもなりますしね。」
うーん、そうなのか。
いや、たしかに、この世界ではひとたび村の外に出れば身分を証明するのは大変だ。
まあ、王都への旅では勇者パーティがいたからそうでもなかったけれど……。
「そ、それではまずは登録されますかぁ?」
それじゃあ登録しておくか。




