8話 からまれ
連休の最後、よろしくお願いいたします。
とうとう来てしまった冒険者ギルド。
……このジョブが分かってから来ることはないと思っていた。
リアは立ち止まって建物を見上げている俺を気にすることはなく建物のドアを開くと中にさっと入っていく。
あ、ちょっと待って。
バタン。
無情にもドアは閉まる。
仕方なく、俺もリアに続いて入ることにした。
カランコロン。
ドアを開ける、響くベルの音を聞きながら中に入っていく。
ずんずんと前に進んでいくリアが見える。
俺は入ったところできょろきょろと挙動不審に周りを見る。
周りにはいくつもの丸いテーブルとイス。そして奥には大きな掲示板があった。
イスには十名程度の冒険者がすでにいた。
ほとんどが男か。いや若干女の人もいるみたいだ。
そんなことを考えていると、いくつもの値踏みするような視線を感じる。
そしてここに入ってきたときの俺の様子を見てか、くすくすと笑い声も聞こえる気がした。
えっと、こういう時ってどうすればいいんだ?
とりあえず、堂々としていればいいのか?
教えて、リア!
そんな俺の心の内を気にすることもなく、彼女は受付と思われる台の前で女性と話していた。
とそこへ、有り体に言えばスキンヘッドの強面のおっさんが近づいてくる。
うわ、こっち来た。
「おう、坊主。ここはガキのくるところじゃないぜ。」
「え? あ、いや、ちょっと用事が。」
そう言って、リアのいる方をちらちら見る。
おーい、リア、俺、からまれてますよ。
テンプレのごとくからまれてますよ。
「用事? でおめえジョブは何なんだ?」
この世界、スキルは別に答えなくてもよいが、ジョブは聞かれたら答えるのが普通だ。
俺は正直に答える。
「えっと、木彫り職人でして。」
「ああ?」
大きな声で聞き直してくるおっさん。
「いやー、木彫り職人でして。」
「あははは、聞き間違えかと思ったが。木彫り職人だって? どうやらここに来たのは間違いのようだな。」
そうして睨みつけられる。
言外に帰れとおっしゃられているようだ。
俺は素直におっさんに従うことにする。
いやだって腕の太さが俺の2~3倍ぐらいあるんだもん。
「あはは、そうですね。それでは。」
そう言ってドアの方を向いて足早に立ち去ろうとする。
「もう、何をやっているんですか、リト。」
リアは俺の横で睨みつけているおっさんに見向きもせず、今まさに立ち去ろうとする俺を呼び止めてきた。
彼女はそのまま俺の横にやってくると、腕をつかみ先ほどまで話していた女性の方へ引っ張っていこうとした。
「そんなとこで遊んでないで、ほらこっちです。」
おれはちらっとおっさんの方を見る。
うわ、凄い睨んでるよ。リア、どうすんの。
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