7話 宿
よろしくお願いいたします。
食堂から出ると、俺はずいぶんと膨れた腹をさする。
ふー、食べた、食べた。
そんな俺を見て少し笑うリア。
「さあ、リト、宿屋に行きましょう。」
え? 何か用事あったっけ?
そんな約束していたかと先ほどまでの会話を思い出す俺。
「いえ、行く予定はなかったんですが、今日の様子を見てちょっと気になったんです。」
「え、いやちゃんと宿に泊まってるって。」
前に出した手を横に振りながら慌てて返す。
俺は宿に連れて行くと不味い気がした。
「ちゃんと泊っているんなら問題ないでしょ。日が暮れる前に早く行きましょう。」
意思を変えそうにないリアを見て、しぶしぶ前を歩く。
俺は仕方なくリアを宿に連れていくことにした。
◇
「……ここ、ですか。」
俺の泊ってる場所に連れて行ったときのリアの第一声の言葉である。
初め呆然とその場所を見ると、先ほどの言葉を発し、その後、俺の方を向くと腰に手を当てて俺を睨みつけた。
リア、まじおこだ。
そう、そこは宿の馬小屋だった。
いや、最初は紹介してもらったちゃんとした宿に泊まっていたんだよ。
ただ、売れないし、どんどん泊る金もなくなっていくしで。
さすがに野宿はまずいかと思い、店主に紹介してもらった場所がここだった。
「ここ、安いんだ。それに藁があって夜は結構暖かいしな。」
「……でしょうね。」
リアの短い反応が、いろいろ言われるより逆に怖い。
ジーっとこちらを見続けるリア。
心の中まで見通されそうな感覚になる。
いや、悪いことはしていないはずなんだけど。
「はあ。」
あからさまにため息をつくリア。
なんか今日はため息ばっかりつかせている気がする。
申し訳ないです、ほんと。
「リト、先ほどのお願いの件、お金を先払いにしておきます。」
さすがにそれはまずいだろうと思い、断る。
「それは悪いよ。それに今日、売れてお金が入ったからちょっとは良い宿に泊まれるし。」
「いいえ。そのお金もすぐになくなるでしょう。それにこのまま放っておくほうがまずいです。」
リアは首を横に振り、有無は言わせないとこちらを見る。
そうはっきり言われると返す言葉もない。
「たしか冒険者ギルドが紹介する安い宿がありました。まずはギルドに行きましょう。」
そう言ってリアが俺の手を取る。
「え? でも俺、冒険者じゃないよ。」
手をつないだまま、少し考える素振りを見せるリア。
「うーん。……まあ、いいです。行ってから考えましょう。」
さあ、行きましょうと、手を引っ張る。
ああ、これはついて行くしかないな。
ぐっと引っ張られる俺。
分かった、分かったから。先に店主に今日の宿を断らせて、ね。
それにしても、リア、もっとおとなしい子かと思ってたけど、結構押しが強いんだね。
明日で連休も終わりですね。どこまで書き溜めできるか。




