6話 お揃いグッズ
少しだけ長くなりましたが投稿します。
俺は腹が膨れたところで、さっそくリアに用を聞く。
「それで?」
俺の食べる様子をじっと見ていたリア。
「え? 何がですか? それにしてもずいぶん食べましたね。」
「あ、ああ。ごちそうさまです。じゃなくて、俺にお願いって?」
彼女は思い出したというように顔をはっとさせる。
「そうでした。」
彼女は改まって、咳を一つすると、少し俯きながら言いにくそうにちらちらとこちらを見る。
「……えっとですね。」
「リアには貸しもあるし、ここで飯もおごってもらったんだから、たいていのことは聞くけど。……そんなに言いにくいこと?」
リア、いったいどんなことをお願いするつもり?
俺は少しドキドキする。
「いえ、あの、実は作ってほしいものがあるんです。」
作ってほしいもの? 俺に?
「作ってほしいってことは木で?」
彼女は深く頷く。
「そうです。 ミーナやアミスの武器はリトが作ったんですよね。」
俺が作ったのは間違いない。
ただ、俺みたいなのが作るより、リアだったらもっといいもの持っているんじゃないのか?
そう思いながら、リアが腰に携えている杖を見る。
「ああ、確かに俺が作ったけど、でもリアは武器持ってるんじゃないのか? 知っているように、俺、木でしか作れないぜ。」
「ええ、知っています。」
知っていてか、うーん、どんなものを作ってほしいんだ?
それとも何か気になることでもあるのか?
俺は何か忘れているような気もしたが聞いてみる。
「えーっと、なにか気になることでもあるのか?」
リアはこちらをじっと見ると、声を少し小さくして聞いてきた。
「あれ、どうやって魔力込めているんですか?」
ぶほっ。
俺は飲みかけていた湯を吐き出す。
しまったそれか。そういえばこの娘、魔力が見えるとかで俺の作ったもの怪しんでたんだった!
「な、なんのことですかな?」
動揺して言葉がおかしい、が口から出た言葉は戻せない。
「あの村の柵だって、魔力が込められてましたよね。 あれ並みの魔道具よりすごかったですよ。」
あはは、そういえばそんなこともあった。
ヤバい、何とかごまかさないと。
「そ、そうだ。思い、思いを込めているんだよ。」
リアは胡乱げな顔をしてこちらを見る。
「思い、ですか?」
「そう。思いを込めるとああなったんだ。」
ああー、もう言い切るしかない。
俺はなぜもうちょっとマシな嘘をつかなかったんだー。
彼女はジト目でこちらを見ている。
明らかに信用してないよね。
俺が逆の立場でも信用しないと思う。
「(やっぱりレアジョブ? それともレアスキル? 目が怪しいとは思うんだけど、メリッサさんは教えてくれなかったし……。)」
この娘、ときどき、一人でぼそぼそと呟くよね。
魔導士ってやっぱり一人の世界に閉じこもるような人が多いんだろうか。
って偏見か? それは。
いやここは話を先に進めるチャンス。
「そ、それで? 武器を作ればいいの? リアだったら杖かな。」
彼女ははっとした表情をする。
首を横に振る。
「あ、いえ。違います。」
「え? 違うの?」
今の流れだと、てっきり武器かと思った。
いや杖じゃないってことか?
はっ!?
まさか、こん棒?
「腕輪です! 私にも腕輪を作ってほしいんです!」
「へ!? 腕輪? えっとこれでいいの?」
そう言って懐から今日、売れ残った腕輪を一つ取り出す。
「これでよければどうぞ。」
リアに腕輪を渡す。
彼女はその腕輪の受け取りを丁重に断る。
「いえ、それはいらないです。」
い、いらないの? けっこういい出来なんだけど……。
ちょっとショックを受けた。
「ああ、いえ、しっかりと魔力を込めた腕輪。えっと、ミーナ達に渡していたものが欲しいんです。」
「え?」
ああ、お揃いか!
なるほど、女子は仲良しのグループでお揃いのグッズを持ちたがる、と前世で聞いたことがある。
俺は納得して、うんうん、と深く頷くと、暖かい目で彼女を見た。
ミーナとアミスが持っているのを見て、自分も持ちたいと。
彼女はジト目でこちらを見ると。
「何を考えているかまったく分からないですが、絶対に違うということだけは分かります。」
そう言われた、なぜに。




