5話 プライバシー
よろしくお願いします。
先にご飯を食べましょう、と言ったリアの言葉の通りに、俺はやってきた料理を次々に口へと運ぶ。
それはもう、周りを気にすることなく次々と。
「えっと、お腹すいていたんですね……。」
唖然と俺を見るリア。
いやだって、腹、減っているからね。
「あ、あの……。」
遠慮がちに俺を見る。
「なに?」
「普段は何を食べてたんですか?」
飯を食べるのを止めず。
「うーん、毎日、芋串を一本かな。」
「……え?」
絶句するリアに俺はもう一度繰り返す。
「いや、だから、ここ数日は露店の芋串を1本かな。」
ガシャン。
彼女はその場で立ち上がり、テーブルの上に手を叩きつける。
勢いで皿が鳴った。
「ええ―!? ミーナは? ミーナは知ってるんですか?」
周りの目を気にすることなく、リアが大きな声を上げた。
いやいやミーナに言えるわけはない。
ミーナに言わなくてもこのことが伝わると、飛んできて、きっと彼女の家とやらに無理やり連れて行かれるだろう。
俺は首を横に振る。
「どうしたの? リア、大きな声を出して。」
突然のリアの奇行に驚いたのか、シーナがリアに声をかける。
「へ?」
自分の行いに気づいたのか、慌てて椅子に座る。
「な、なんでもないです。」
リアは咳ばらいを一つすると。
「はあ。」
彼女はあからさまにため息をついた。
「それではアミスには?」
俺は再度首を横に振る。
「アミスにも言ってないよ。それにアミスはお城で剣の修行とかで会ってないし。」
……と言うかアミスは俺のいる場所知っているのか?
連絡するとは言ったもののどこに連絡すればいいのやら。
そんな俺の気持ちを知ってか、リアはジト目で見る。
「アミスもミーナもリトのいる露天の場所は知ってますよ。」
え!? 俺のプライバシーは?
「なんで?」
「だってあの場所、メリッサさんの紹介でしょ?」
何を当たり前のことをといった顔で、リアは当然のことのように語る。
頭の中で、見下すような表情で、うふふ、と笑うメリッサが思い浮かんだ。
……あの女!
……いや、ミーナやアミスに連絡するとは言ってたんだし、メリッサに怒るのは筋違いか?
でも、すんなりとは納得できないような。
「うーん、ミーナには頼ってもいいとは思いますが。あの子、結構お金持ってるんですよ。……まあ、今日はしっかり食べてください。リトに倒れられても困りますから。」
「ああ。ていうかなんで?」
気にかけてもらえるのはありがたいけど。
「ほら、少しの間ですけど一緒に旅をした仲間ですし。リトに何かあったら、と思うと心配ぐらいしますよ。(……アミスとミーナが何するか分からないですし。)」
俺は思わず、リアの顔を見つめる。
「え? どうしました?」
リア、優しい娘。惚れてしまうやろ!
え? リアの後半の言葉? それは聞こえていない。




