2話 何とか売れた
よろしくお願いいたします。
いつも誤字報告ありがとうございます。助かっております。
露店で座ってもう半日以上が過ぎている。
この場所はメリッサに紹介してもらった。
宿屋に泊った次の日の朝に、メリッサが一度様子を見に来た。
その時に、この場所を紹介してもらったのだった。
この場所を紹介してもらうとき、本来は、初回の登録料が必要だったのだが、メリッサが立て替えてくれた……。
順調にメリッサからの借りが増えている……。
どこかで返さないと取り返しがつかないことになりそうな気がする。
そして、今日の売上はというと……、ゼロだった!
ヤバい! このままだと早々の手持ち資金が底をついて宿にも止まれなくなる。
木彫り熊と木工細工、実は熊の方が売れている。
物珍しさに買ってくれる人がいるのだ。
うーん、やはり熊を優先した方がいいのか?
いろいろポーズを変えた品を増やしてみるか。
いやしかし、この木で作った腕輪とか、指輪とかもなかなかのものだと思うんだけどね。
ちなみに、これらはミーナやアミスに渡したものとは違って、ごく普通のものになっている。
一つだけ、スキルの魔眼を使って作った腕輪がとってあるが並べてはいない。
リアとかメリッサみたいな怖い人がいないとは限らないからなあ。
もし、これらを気に入った客がいればあげることにしようかな。
ん? フラグか? これ?
◇
「あ、そこのお嬢ちゃん、どうだい? 見ていかないかい?」
そう言って、目についたなんか上等な服を着た女の子に声をかける。
「え? 私ですか?」
そう言って、こちらにかわいい顔を向ける。
うーん、なんか、場違いにすごくかわいい子だな。
貴族様? 不敬罪とかで殺されないよね?
女の子の周囲には街人の服を着ているけれど護衛っぽい女性が数名囲んでいるようだった。
なんとなく、ラキに雰囲気が似ているんだよね。
俺もだてに勇者パーティのみんなと過ごしていたわけではないのだ。
とことことこちらによって来る女の子。
「ほら、見て行ってくれ。木彫りの熊人形もあるよ。」
そう言って熊を見せる。
「うわー!? かっこいいですね!?」
おっ? いい感触か?
「そうだろ、ほら、こっちは腕輪とかの装飾品だ。」
「へー、木なのに綺麗につくってありますね?」
「おぉ、お嬢ちゃん、見る目があるね。どうだい? 熊の人形とか買ってかないか?」
うーん、と悩み始める彼女。
おや? 熊も気になるみたいだが、腕輪も気になるみたいだ。
もう一押しするか。
「よし、もし、熊を買ってくれたら腕輪もつけるよ?」
「え!? ほんとうですか? じゃあ、買っちゃおうかしら。」
後ろをちらちらと見て、護衛の反応を伺っているようだ。
お、どうやら許可が出たような。
「それでは、買います。」
「おお、そうか。」
うん、よし、腕輪はこっちをやるか。
そう言って、懐に入れていた腕輪を出す。
「ほら、熊はこれ、腕輪はこっちをあげるよ。」
「わぁ!? そちらはここにあるものよりすごくきれいですね。」
「ん? まあそうだろ、気合いれて作ったからな。ほら。」
「はい、ありがとうございます。」
護衛の一人がお金を渡してくれた。
「熊のポーズを変えた新作が出たら、また買ってくれよな。」
そう言って去っていく彼女に手を振った。
ふう、何とかもう少し宿には止まれそうだ。
でもどうするか。このままだとじり貧になる可能性がある。
別の働き口でも探すか?
それとも……、ヒモか? ヒモになるのか? ミーナの。
ミーナが言うには勇者パーティに所属すると給金が出るらしい。
しかも魔物を討伐するとその賞金も出るとか。
結構なお金が貯まっているらしく、家もあるが手入れもしていないとかで、家の掃除とかをする代わりにその家に住んでもいいらしい。
働いているんだからヒモじゃないのか?
うーん、魅力的だ……。




