27話 最後
少し長いですが、切りが良いのでここまで。
念のため、残酷な描写ありです。
ミーナは何かの詠唱をすると、ミーナを中心に周りに柔らかい光が広がっていった。
「みんなの精神力を向上させたわ!」
ユウヤも動けるようになったみたいだ。
「ふん、俺に任せて一般人は下がっているんだな。」
俺にそう言って、剣を構えて男に向かっていった。
おお!? ユウヤが勇者っぽい。
いつもこんな感じだったら普通にモテるんでは? こいつ。
◇
襲ってくるグールをユウヤは剣で横なぎに一太刀。
真っ二つに分かれたグールはそのまま消える。
「貴様、それは聖剣か!」
「へえ、よく知ってるな。」
ミーナが俺を守るように俺の傍に立ち教えてくれる。
「ユウヤの持つ聖剣は魔物の中でも闇の属性を持つ者を切ると致命傷を与えることができるの。」
な、なるほど。聖属性は闇属性に強いってことだな、RPG風に言えば。
「く、こんなところで勇者に会うとは、時間をかけすぎたか。」
続けざまにグールを数体切り伏せ、その男に差し迫る。
一瞬だった。
ユウヤの凪いだ剣が女の子を掴んでいた腕を切り飛ばす。
「くっ!」
男は後ろに跳躍すると、ユウヤとの間を開ける。
「忌々しい。」
男の眼が先ほどよりも深紅に染まる。
と同時に。
「ぐっ。」
数歩後ろにたたらを踏むユウヤ。
どうした?
「ふふふ、お前ら同士で殺しあうがいい!」
え?え?
周りを見ると、今度はミーナまでが跪いていた。
「リ、リト。逃げて……。」
ど、どうしよう。
「ぐぅぅぅ。」
後ろでメリッサがうめいている。
アミスも苦しそうだ。
メリッサが立ち上がると、ユウヤに向かって炎を飛ばす。
ユウヤは剣でその炎を払うと、そのままメリッサに詰め寄り、剣を払う。
メリッサは跳躍して避けると、曲芸のようにそのまま空中で背面に宙返りして離れた場所に着地する。
メリッサとユウヤが魅了された?
これはヤバい!?
ど、どうすれば?
「くくく、勇者とその仲間たちの殺し合い。せいぜい楽しませてもらおうか。」
ドヤ顔で独り言をつぶやく男。
あ、目が合った。
「ん? お前、な、なぜ普通に立っている!? ……いや、その格好からしてただの村人か? 何の力ももたない雑魚だから突っ立っているだけか。」
い、いや。効いてないんです、とは言えない。
というか、雑魚ってひどいな。
……たしかに非力だけどな!
「はあ、こんな雑魚では余興にもならんか。なぜかは知らないが魔力は多そうだ俺の食事にでもしてやろう。」
そんな勝手なことを言いながら近づいてくる。
以前の寝ているときに襲われた時より落ち着いて対処できるか?
俺は、俺の魔眼で相手の魅了を上書きした。
「ふむ、とくに何もなさそうな村人だな。」
そう誰も立っていない場所で一人でぶつぶつしゃべっている。
「くたばれ!」
「ぐあ。」
そんな無防備な男の背に向かって、正気に戻ったユウヤが切りかかる。
ユウヤ、そのセリフ、勇者としてどうなのよ。
ユウヤの一撃と同時に、メリッサとミーナが同時に詠唱。
ヴァンパイアの足元に光の輪が描かれ、男を囲むように壁ができる。
そのまま壁は中心へと縮まり、男を拘束した。
「な、なぜおまえら? う、動けん!」
「はっ、勇者にそんな小技が効くかよ!」
いやいや、ユウヤ、ばっちり効いてたよ。
だってメリッサに切りかかってたもん。
俺のそんな心のセリフを知ってか知らずか、ユウヤは背中を切り裂いた後、そのまま返す刀で男の首を刈り取った。
驚愕の表情のまま宙を舞う頭。
男の体と頭は瞬時に燃え上がり跡形もなく消え去った。
終わったのか?
「さて、あとはあいつだな。」
しゃがみこんだまま、呆然とこちらを見ていた女の子に向かって、ユウヤはそう言った。
◇
その声にびくっと身を縮ませる女の子。
俺はユウヤを止めようとする。
「え、どうしてだ?」
ユウヤはこちらを見ずに答える。
「そいつもヴァンパイアだ。まあ、周りにいたグールの親玉はさっきのやつみたいだがな。」
既に消え去ったグールのいた場所を見る。
「だったら逃がしてやってもいいんじゃないか?」
後ろからメリッサが否定する。
「それは駄目です。とくにヴァンパイアはその被害が大きくなることから、発見次第駆除する常時討伐対象になっています。」
な!?
でもあんな女の子を。
近づくユウヤ。
しゃがんだまま後ろにじりじりと下がる女の子。
慌てて立ち上がると背を向けて逃げようとする。
一歩、踏み込んだユウヤは、その女の子の首を後ろから一閃、真横に切り裂いた。
あっさりと切り離され、宙をくるくると回る頭。
と同時に、体と頭は燃え、跡形もなく消え去った。
えーっと、この物語はシリアス分は少なめ、ハッピーエンドに向かっていく……はずです。
念のため。




