22話 ピンチ
よろしくお願いいたします。
夜、ドアが開く音がした気がしてなんとなく目が覚める。
ん? 誰か入ってきたのか?
微睡の中、そんなことを思う。
アミス? ミーナ?
少し目を開けたとき、黒い影が覆いかぶさってきた。
うぐっ!
強い力で体を押さえつけられ、思わずうめき声が漏れ出る。
俺は何とか押し返そうとするが、押さえつけられた体勢が悪い。
「は、離れろ!」
声を上げて、押しのけようとするが、びくともしない。
とういか、この力、ほんとうに人間か?
暗闇でよく見えないが、成人男性程度の大きさで、顔は男のような気はする。
その影の手が俺の首を絞めようとしてきた。
手で払いのけようと抵抗する俺。
抵抗むなしく首を絞められる。
ぐっ、これ、マズイかも。
今までで一番ピンチだ。
なすすべもなく意識が朦朧としてくる。
バンッ!
その時、ドアが開く音が耳に聞こえた。
「リト!」「リトさん!」
声はミーナとメリッサのようだ。
助かったか?
焦りつつも、何とかなりそうだという余裕が若干生まれる。
メリッサが明かりをつける魔術を唱える声がかすかに聞こえた。
いつのまにか俺たちの横に立っていたミーナが俺の上の覆いかぶさっていた男をこん棒で横殴りにする。
ドカッ!
すごい音とともに、男は勢いよく飛ばされると、壁にぶつかり動かなくなった。
おぉ、流れるような連携、さすが勇者パーティ。
俺は倒れたまま、横目でミーナとその男を見ると、助かった安堵もあってかそんなことを思っていた。
◇
俺はミーナの癒しの術で治療される。
とくに目立ったけがはなかったのだが、ミーナがどうしてもと譲らなかった。
「リト、じっとしていて。しっかり治療するからね!」
っていうか、聖女の癒しって結構貴重なのでは?
どうやら、あの時、ミーナやメリッサだけでなく、他の勇者パーティも後ろに控えていたようだった。
俺の治療も早々に終わり、勇者パーティの面々に続いて、村長らがやってきた後、この部屋では狭いということで、外に出る。
もちろんミーナに殴り飛ばされた男も意識のないまま縛られて連れ出された。
ていうか全然動かないけど、生きているのか? あれ?
はっきりとは見えなかったが、こん棒で殴られた時、とんでもない速さで飛んで行ったような気が……。
……うん、ミーナはできるだけ怒らせないようにしよう。
改めてそう思った。




