3話 幼馴染
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「あら、リト、起きたのね。」
「スキルに目覚めたそうだな。アミスに聞いたが狩に役立ちそうなスキルでよかったな。」
机に座っているこの世界での母さんと父さんが話しかけてきた。
「うん、そうだね、良かったよ。」
そう言って俺は椅子に座ると、すでに用意してあった朝ごはんに手を付ける。
「そうだわ、リト、ミーナちゃんが朝来てたわよ。」
思い出したように、母さんが教えてくれた。
ミーナは俺の幼馴染で、近くに住む同い年で仲の良い女の子だ。
「分かったよ。後で会いに行って見るよ。」
「ねえ兄さん、私もいっしょに行っても良い?」
「ああ、良いよ。」
そう答えるとアミスは嬉しそうにその場で跳び跳ねる。
「もう、アミスはリトの後にいつも着いていって、リトのことが大好きね。」
「ええ、私、兄さんとずーっと一緒にいるの。」
あきれる母さんにアミスはそう返し、こちらの反応を伺うようにちらっと見た。
妹とは言え、前世で言えばアイドル並みに可愛い女の子からこう言われると、ついついうれしくなってしまう。
前世で妹がいたのかわからないが、慕われるのはいいものだと思った。
けっしてシスコンではない。
◇◇◇
朝ご飯を食べ終え一服した俺はアミスを連れてミーナに会いに、彼女の家に向かう。
彼女はちょうど外に出て家の前にある花に水をやっているところだった。
ミーナは茶色の髪をした美少女だ。
アミスといいミーナといい、間違いなくヒロイン候補だよね、ということは、俺が主人公……、まさか魔王を倒せとかお告げが来るんじゃないだろうな。
いやいや、俺はこの村でスローライフが良いんだけれど。
「ミーナ!」
「あっ、リト。来てくれたの?」
俺が声をかけると、こちらに気がついた彼女は手を大きく振ると元気よく駆け寄ってきた。
「ミナ姉、私もいるよ。」
そう言ってアピールするアミス。
「あら、アミスも来てくれたの。うれしいわ。」
「それで何か用があったのか?」
「ええっと、ねぇ、用事というわけじゃないんだけど、今日時間があるんだったらいっしょに遊ばない?」
遊びと聞いて、一瞬、何をするのかと思ったけれど、彼女にはよくままごとに付き合わされていたことを思い出す。
どう返そうかと考えていると、
「それより聞いてよ、ミナ姉。兄さん、スキルに目覚めたのよ。」
「え? そうなの? ねぇ、リト、何に目覚めたの?」
すごく期待した目でこちらを見てきた。
「鷹の目よ、鷹の目。これで狩が楽になるね。」
自信満々にアミスが答えた。
「ていうか、なんでお前が先に答えるんだよ、アミス。」
そんなアミスをジト目でみると、あははと彼女は笑って目を反らした。
「やったわね、リト。これで結婚してからも安泰ね。」
ミーナはことある毎に結婚と口に出すのだ。
俺たちまだ12才、とはいえこの世界では早ければ16才を過ぎた頃には結婚する。早すぎるということはない。
ふと横を見ると、アミスがムスッとした顔で……。
「ちょっとミナ姉、何いってるのよ。兄さんはずっと結婚しません!」
「ふふーん、おば様たちにはもう認めてもらっているもん。」
二人はいつものようにじゃれあいを始める。
二人には嫌われてはおらず、どちらかと言えば好かれているんだろう。
前世の記憶が甦り、精神年齢が上がった今ではよく分かる。
まあ、まだ子供の話なので本気というわけではないのだろうし、この先どうなるかなんて分からない。ただ、前世の記憶がなければ本気にしていたのかもしれない……。
「ずっとこんな生活が続けられればな……。」
ただ、思わず言葉に出ていた。
「え! ……そうね。」
ミーナは少し顔を赤くして、俯きながら嬉しそうにしていた。
ここでの暮らしには心踊るような冒険はないけれど、ゆったりと過ぎていくこんな生活が続くのも悪くない、そう思うのだった。
……アミス、そのブスッとした顔はやめなさい。