10話 心配
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「それで。」
そう言いながらユウヤが村長の方を向く。
「この俺に何か頼みたいことがあるんじゃないのか?」
一瞬、虚を突かれたように驚く村長。
その顔は、どうしてそれを、と言っているようだった。
「どうしてそれを……。」
あっ、本当に言った。
いやたしかに、ユウヤはなんで分かったんだ?
それほど長くない間だったが、一緒に旅をしただけであいつがこういった機微にはうといことが分かった。
「ふん、俺たちがこれまでにどれだけ村々を訪れて問題を解決してきたと思っているんだ。」
そういって偉そうな態度で村長の方をじろりと見る。
「なるほど、御見逸れいたしました。」
そういって頭を下げる村長。
うーん、つまりは前にもこういったことがあったってことか。
そういえば、ミーナからも同じようなことを聞いていたな。
なんだかんだで勇者らしいこともたくさんしてきたんだろう。
とはいえ、そこまで偉ぶることか?
いや、何の力もない村にっては大したことなのかもしれない。
そう思いつつ続きを見ていると村長が話は始める。
いつの間にか、ミーナやリア、ラキも真面目な顔をして村長の話を聞いていた。
ユウヤは、まあ変わることなく不遜な態度ではあったけれど……。
「実はこの村の近くでゴブリンが集落を作ったようで、日に日に現れる数が増えており困っております。」
そう言って俯きうなだれる村長。
「なんだゴブリンか。」
ゴブリン。ファンタジーではお馴染みの緑色をした子供のような背丈の魔物。
この世界のゴブリンも多分に漏れず女性にとっては天敵だ。
「はい、数が少なければこの村の若い衆でも対処できるのですが、数が増えるとそのうち犠牲者が出るでしょう。そして……。」
そう言って、村長の孫のミリカや周りにいた若い女性に目をやった。
ユウヤも彼女たちを見る。
「ふん、確かにあれらは数が増えると普通の村人にはちょっと厄介だからな。」
ユウヤは傍目から見ると嘗め回すように彼女たちを見た後、村長の方に向くとニヤリと笑う。
「まあ、まかせておけ。ゴブリンぐらいすぐに片づけてやるよ。」
さすが勇者。これからは、さすゆうと心の中で呼ぶことにしよう。
それに合わせるように、周りのパーティメンバも強く頷いた。
おぉ、アミスもやる気満々だ。
ただ、それまでの態度を思い返すと、……うーん、あれが勇者でいいのか。
あれをアミスに近づけても良いのかお兄ちゃんは心配だ。
お守りに何か作ろうかなぁ。
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